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影浦で「結論はとうに出ている」



※ツイッターの140字お題を肉付け
※13巻カバー裏ネタ

普段、影浦の実家であるお好み焼き屋へ来たら、睨まれたり舌打ちされたりする。しかし、今日は入口に立った私を見て、彼は何も言わなかった。こういう時、彼のサイドエフェクトは便利だと思ってしまう。今の私の寂しい気持ちも悲しい気持ちも、一つ残らず理解されている気になる。
「豚玉」
私のそっけない注文に影浦は黙って厨房へ引っ込んだ。やがて戻ってきたかと思うと、どんぶりを置いて踵を返そうとする。私は「影浦」と、さっきの豚玉と同じトーンで呟いた。視線だけがこちらを向く。
呼んだきり動こうとしない私にしびれを切らしたのか、彼はぼさぼさの髪を覆うバンダナを、苛立たしげにかきむしった。何か言いかけて口を閉じ、ため息をついてこちらに向き直る。それから慣れた手つきで具をかき混ぜると、熱くなった鉄板の上に広げた。じゅわぁと耳障りの良い音がする。
私が何も言わないから、影浦は答えない。私の視線が痛いから、影浦はこちらを見ない。
私はどうして自分がこの店に来ようと思ったのかを考える。影浦はきっと、私以上にその答えを知っている。

151205