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折原さん、こないの



「折原さん、生理が……こないの」
「知ってたよ。いつ言ってくるかなって待ってたからね」
勇気を出して打ち明けたら、この返事である。呆気に取られて、口をぽかんと開けていると、何が面白いのか、クスクス笑いだす。
「ここ数週間、ずいぶんと思い詰めていたみたいだったけど、どういう気持ちだった?そして、それを俺に伝えて、どういう風に返してもらう事、期待してる?」
私の中で、急速に熱が冷めていく。こういう男だと分かっていて、傍にいたのに、いざ目の当たりにすると、辛いものがある。私も彼と同じ、無責任で優しくない人間だったらしい。自分さえ大切にされていれば、どうでもよかったんだ。
「なんでもない、忘れて」
「へぇ?それは、さっきの発言のこと?」
「違う。私のこと。もう二度と目の前に現れないから」
背を向けて彼の前から立ち去ろうとすると、腕を掴まれ、向きなおされた。まだ少し、口元が緩んでいる。私が本気で悩んでいる姿さえ、彼にとっては楽しみの一つだったのだろう。そう思うと情けなくて悔しくて、愛されていると勘違いしていた自分が惨めに感じた。
「離して。もうやだ」
「ごめんごめん、からかいすぎたよ。それで、君はどうしたいの?」
泣きそうになっている私をあやすように、彼が頭を撫でる。それを振り払って背を向けようとすると、後ろから抱きしめられて、肩に額を乗せられる。
「産みたいの?それとも、おろしたいの?」
「よくそんな、残酷なこと、聞けるね」
「俺は、産んでほしいなぁ」
噛みあわない会話に苛立つより前に、自分の耳を疑った。首だけ捻って後ろを向こうとすると、至近距離で目が合って、かすめるようにキスをされた。
「俺が、どうでもいい女を孕ませるようなヘマすると思う?」
目を細めて笑う折原さんが、愛しそうに私の腹に手を置いた。

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