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十神くんに会話の許可をもらう



図書室は静かだ。おしゃべりが禁止されている場所だからというのもあるけど、今は私と十神くんしかいないことが大きい。
彼がページをめくる音だけが聞こえる。あと、コーヒーカップをお皿に戻す時の食器のぶつかる音がたまに。
そんな息が詰まりそうな空間で、私はなぜか十神くんの足元で正座させられていた。長い時間そうしていたせいで、だんだんと脚がしびれてくる。
「あのぉ……」
恐る恐る声をあげてみると、こちらも見ずに「なんだ」と返される。
「私、帰ってもいいですか?」
「なぜだ」
「なぜって……逆に私が聞きたいんですけど、なんでこんなこと強制されてるんでしょう……」
十神くんが怖い顔で私をにらんだ。怯んだ私は身をかばうように手で頭をかくす。
「お前は……俺が好きだったんじゃなかったのか?」
「好きです……」
「だから側に置いてやってるんだ。感謝したらどうなんだ?」
「それなら、普通に椅子に座りたいです」
十神くんが本を閉じた。叩きつけるようにデスクに置く。
「図書室には椅子が一つしかない……。この俺に床に座れというのか?この十神白夜に!!」
「いやっ!そんなつもりは……!だ、だったら教室行くとか自室に行くとか、あるじゃないですか!」
十神くんが考え込むように腕を組む。
「……お前は本当に俺が好きなのか?」
「えっ、だから好きですけど……」
「けど、なんだ?」
「好きです!!」
「じゃあ何故そんな風に要求する。腐川のやつは『白夜様を眺めていられるだけで幸せです』と言っていたぞ?」
他の女の子の名前が出たことがショックだった。それでも彼は心底疑問に思っているようだったので、辛抱して解説する。
「そりゃ、見てるだけでも幸せですけど、やっぱりお話できるほうが嬉しいに決まってます。こんな床に座らされて、『読書の邪魔はするな』なんて……。そもそも腐川さんは友達じゃないですか。私のこと、かっ、彼女にしてくれたんですよね?それなのに、友達と同レベルの扱いなんですか?」
彼は押し黙った。少しでもこの悲しみが伝わったらいいと思って、真剣な目で見つめる。
長い沈黙の後、ようやく十神くんが口を開いた。
「腐川は友達ではない」
「えっ、そこなの……!?反論するとこそこなの!?」
「ただのストーカーだ」
がっくりと項垂れていると、椅子の滑る音がした。顔をあげると十神くんが片膝をついて私を覗き込んでいた。驚いて、つい腰を浮かせてしまう。
「十神くん、そんな、服が汚れちゃうよ!」
「……ストーカーと同じ扱いでは、いくらなんでも哀れだったな」
え、と声をもらすと、手を差し出される。十神くんを見ると、つかまるように目線で促された。
おずおずと自分の手を重ねると、一気に引っ張られ、立ち上がらされた。
「お前の主張はそれなりに筋が通っていたな。仕方ない、俺と会話することを許可しよう」
「あっ、ありがとうございます……!」
「おい、椅子のある部屋に行くぞ。……教室は誰が来るか分からんな。お前の部屋だ」
「は、はい!分かりました!」
まだまだ道は長いけど、ちょっとだけ恋人として進展した気がする!

131110