妄想の墓場 | ナノ
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一緒に帰りたいカルマ



 休み時間、窓の外を見ると雨が降っていた。隣の席から「傘忘れた」と呟きが聞こえる。

「赤羽だっさー! 天気予報見ないの?」
「そういうあんたは?」
「折り畳み傘ありますー」
「じゃあ入れてもらお」
「頭を下げるなら入れてあげよう」
「二度と俺から勉強教わりたくないみたいだね」
「すみませんすみません! 日頃の感謝の気持ちを込めて傘をささせて頂きます!」
「仕方ないな、借りてあげるよ」
「いやそれ私が濡れるじゃん!」
「バカは風邪ひかないって言うし大丈夫でしょ」
「もー知らん! そんなこと言う奴は傘に入れてやりません!」
「仕方ないな。相合傘で我慢してあげるよ」
「なんて偉そうなんだ……まあいいよ、私も買ったばかりの傘使うの楽しみだったし……あれ? ない」
「は?」
「やっば、私も忘れた」
「バカ?」
「あんたに言われたくない!!」
「あー、俺置き傘あったの思い出したわ」
「えー!? ずるい!」
「さっきまでの非礼を詫びるなら入れてあげるよ」
「クッ……非礼を受けたのはどちらかというと私な気がするけど、赤羽様すみませんお願いします」
「仕方ない、苺煮オレで手を打ってあげる」
「詫び損じゃん!」





「カルマご機嫌だなー」
「あいつ一緒に帰るため必死かよ」
「アピール受けてる本人は全く伝わってないね」
「小学生男子なんだよなぁ」
 同級生の囁きは、徐々に強まる雨音に隠れて二人の元に届かない。

230608