今日もこそこそと隠れて、好きな人を見つめる

「おい、おまえ」

なんだか、楽しそうに笑ってる

隣の銀髪の人は、なんだか怖いけど背の高い人は良い人にみえる

「そこのおまえだぞ」

でも、話しかける勇気なんてない、ましてや男の子になんて

できなッ「てやっ」

「いたたたた、え?あ、いたいよ僕!」

「さっきから何度も呼んでいるのに無視をするからだぞ」

「そ、そうなんだ。ごめんね?」

「謝ってくれたからいいけどな」

「許してくれてありがとうね」

「・・・俺はリボーンだ、名前なんて言うんだ?」

「私は、猿子きびだんごだよ、よろしくね!」


ん?私、なんで低姿勢になってるんだろ・・・幼稚園児に。

「俺は赤ん坊だぞ、本当は大人だけどな」

「ええ、すごいね!最近の赤ん坊は二足歩行なんだね」

本当に感心してしまった、時代は進んでるんだなぁ。やっぱ栄養あるもの食べてるからなのか。

声をかけてくれた赤ん坊と自己紹介からはじまり、なぜか公園のベンチで趣味の話題

なにこの超展開

流されて、こんなプライベートな話までする私ってバカなの!?

「おまえが、バカなのは間違いねぇ」

「やっぱり、そうなんだ・・・」

「自覚はあるみてぇーだから、救いようがねぇわけじゃないみたいだな」

「ほほ本当に?やった、嬉しい!」

褒められた、ううん、これは慰めてくれたんだ!

「バカであるこには変わんねぇけど」

「・・・・・・そうでした」

なんて現実主義な子なんだろ、中身が大人って言うのは本当なんだね

赤ん坊は身軽でひょいっと私の肩に飛び乗ってきた

「ところで、きびだんご」

「はい?」

「さっきは、なにしてたんだ」

「え」

「こそこそ隠れてただろ」

「え!」

「言ってみろ」

「・・・言えません」

私の癒しと元気の源を堪能してただなんて言えない!!
バカだけど、自覚があるバカなの!!

だから、アレが尾行でストーカーで違法なのも全部自覚済みだから言えない

違う、言わない!!!

「・・・確信犯だな」

「えええ!こ、声に出てたの!?」

「まぁ、そんなところだ・・・痴女」

「ちっ・・・!まままって、言葉遣い良くないよリボーンちゃん!」

「そのまんまだろ、・・・声かければいいじゃねーか」

赤ん坊に痴女って呼ばれた!生涯において最大の恥辱だよ!

「で、どれが好みなんだ?」

「えっと・・・」

「恋愛相談なら乗ってやるぞ」

「いや、大丈夫だよ。だって、叶わないから・・・」

「おまえ、チキンだな」

「・・・」

今度はチキンって言われた、私の脳内で人生が終了を告げている

「・・・リボーンちゃんにはわかんないよ」

「愛人なら何人かいるぞ」

「・・・すごいね、逆に」

「ま、俺はモテモテだからな」

確かに、こんなに可愛い男の子なら女の子は放っておかないかも

今時の子供って、恋愛早いってテレビでやってた


「声をかけてみろよ」

「できない」

「おまえ、美人でもないし可愛くもないが声ぐらいかけてやれ」

「・・・リボーンちゃんがモテる要素、目が霞んでよくみえないや」

「俺は優しいぞ」

「やっぱり、涙でよくみえないや」

場所変えて、砂場でうじうじしてる私にリボーンちゃんは容赦ない

心がズタボロにされていくのがわかる、もう精神も体力も尽きてるのに

まさか、心までゼロにされていくとは・・・!不覚!

声をかける勇気なんて、ないよ。ましてや好きな人になんて、できない。

もうチキンでもなんでもいいし・・・。

「・・・・・・しかたねーな」

「うぇ・・・」

もう涙が溢れてくる、リボーンちゃんの表情よくみえない

けど、あきられてるのだけは感じる

「これは俺からのプレゼントだ、大事にしろよ」

「なんのはなし?」

リボーンちゃんの顔を見ようと見上げれば、

「おい!リボーンなにやってんだよって、泣かしたのか!?」

「俺は女を泣かせるような真似はしねーぞ」

「いや、実際泣いてるから!だ、大丈夫?え、えーとハ、ハンカチは・・・」

「なんだハンカチもねぇのか、やっぱダメツナだな」

「ああ、もう!ごごごめんね、俺ハンカチなくて・・・」

ずっと恋を焦がれてて

「ぐずっ・・・大丈夫です・・・、ハンカチならありまずので」

「そそうなんだ、ウチのリボーンが本当にごめん。どっか痛いところとか」

夕暮れの下校時間、背中しか見ることができなくて

「心臓が」

「心臓病なの?!」

でも、今はこんなにも近くで、声も私に向けられてて

「あ、ありがどうございまじだ!」

「心臓病が発作してることに!?って、あ!!」

もう、満足だ!私、すっごく幸せだ!

いつもより早い鼓動、脈打つ心臓、別に走ってるからじゃない

だって、走る前から、私の全身の細胞がフル活動してるこの生きてる感じ!

大好きな人が何かを言ってたけど、振り向くことなく家へと走って行って

本当なら振り向きたいけど、今振り向けばきっと私は・・・蒸気爆発しちゃう!







残されたリボーンと綱吉はポカーンとしていた

「アイツ、欲すくねーな」

「・・・なんなんだろ、救急車呼ばなくても平気かな」

「大丈夫だろ、呼んだって無駄だろーしな」

「それ、手遅れじゃん!!」

死んでたらどうしょうとか、うろたえる綱吉を放って

遡る綱吉の家でお世話になった翌日

下校後、綱吉を尾行する影を見つけ気になって観察していた

しかし、敵意も殺意もないと判断し、放っておいたのだが

彼女のチキンぶりは、自分をもイラ立たせて急かしたくなるものだった

そんな本日は、やっと彼女に声をかけ

背中を押したつもりだったが、まさか綱吉の名前も知らないまま話ができるだけで満足

しかも、「幸せ」とうたって逃げたのだ、まさにチキン。


これじゃ、ただの通りすがりだ、だがリボーンは腹をたてている

この俺が、わざわざチャンスを作り、背中をおしてやったのに、この不完全燃焼過ぎる結末

むしろ、それがリボーンの美学にさわり、彼を本気にさせていた



「な、なぁリボーン・・・なんか、怖いんだけ・・・ど」

「死ねダメツナ」

「そんな理不尽なぁぁあああ!!!!」


理不尽な仕打ちに綱吉は、傷ついた身体を引きずりながら帰り道についた

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