一撃男 | ナノ


▼ 違ってみえるのは空だけかもしれない




私は、少しそわそわしていた


何しろ、あのタイツの自称忍者くんが私服らしい青年がくるから




断りたかったが、あの期待してる目を見る




なんだろうか、母性本能がくすぐられたといいますか

まるで、未知なる世界へ心躍る冒険心が溢れんばかりの夢見る青年




「このまま来なかったら、約束は無効ですよね」




そう願っていた、だって他の服もあまり期待できません

普通のTシャツを着て欲しいんです






そんなことを考えていたら、新しいお客様がきたようです


「いらっしゃいませ!」


あ、ソニックくんじゃなかったと一安心していると厳しい発言をもらった


「不愉快だわ、仕事以外のことを考えてたでしょ!」

「もももうしわございません!」




鋭いお客様です!…ちょっとこわいです。

でも、仕事中に他のことを考えていたのは本当で正論だった




「ただいま、お席にご案内いたします!」

「ふん」

「おひとりさまで、よかろしかったでしょうか」

「バカなの?見てわかんないの?」

「失礼しました!えと、当店テラス席とお」

「あの席にしてちょうだい」

「かしこまりました、それではご案内いたします」




なんとも厳しい女性です、すごく幼く見えるのだけど

黒いチャイナ服のような服装、これは…意外にも大人だったりするのかな



席に案内したあと、彼女はケーキセットを頼み

ひとり静かに満喫しているようです




キッチンのほうへ下がっていると、キッチンに入った店長が声をかけてきた



「あら、『戦慄のタツマキ』さんね」

「…その感じの名前ということは」

「そう、ヒーロー協会に所属しているS級ヒーロー」




S級ということは、真っ先に思い浮かんだのはジェノスくん

ということは彼女はジェノスくんの先輩ということですね




やっぱり、仕事をしているということと先輩ということは彼女は大人




きっと人生経験も豊富な女性なのだろう

直ぐに私が仕事をおろそかにしたのを見抜けたのも


幼くみえるけど、年の功というものかもしれない





「すごいひとなんですね」





彼女のことを知らない私は、それしか言えなかった

あんなに容赦なく物事をハッキリ言えるひと



前の世界だと

一般社会で生きている分には

出会えないということを知っている



みんな、本心を出すことによって誰かと衝突するのを恐れていた





私もそうだった



誰が好き好んで嫌われる道を選びたがるのだろう




とはいえど、世界は広いのだからきっと

全くいないわけでもないんだろうけれど


私には、前の世界で出会える機会はなかった


注文商品を持ってお客様のもとへ戻って行く私に後ろから店長の声がする












「彼女、念動力使いなのよ」

「…………」

「つまり、超能力者ね」






ああ、そうでした……彼女もそういうヒーローなんですね


そして、サイタマさんとジェノスくんの同僚でした









その日は無事にバイトを終えることができ、結局ソニックくんは訪ねてこなく

帰り道にサイタマさんと偶然会い、「仕事したー」と気だるい声で教えてくれ




彼はちゃんと進めているみたいで、心のどこかでひと安心をした

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