squirrel 4
今年の夏は冷害で森の木の実が少なかった。昆虫や雛鳥も私達のエサなのだが私はベジタリアン。そんなものを食べる気にはなれないし、てゆーかグロくて食べれない。

そんな訳で私は市中に向かった。

イタリアの郊外、物騒だったこの町もすっかり平和になったものだ。



「リスさん、リスさん、」
「?」


金髪の青年がバルコニーから私を呼んでいた。確か……この町の自警団だ。

こいつなら、エサをくれるかもしれない。


「あはは、くすぐったいよリスさん、お腹でもすいてるのかい?」
「キュウ!」
「そうか!ちょっと待ってて、今ドングリ…はないな、トマトでも持ってくるから!」


指をなめれば案の定だ。そのまま彼の肩に乗る。ーー私はリスだ。

人間は自分達が世界で一番優れた種だと思っているようだが動物たちも案外いろいろ考え、人間を利用している。もちろん中には思うがままに生きて人間の罠にかかったり、人間が嫌いで襲うやつもいるけどね。動物から言わせれば同じ種類の限られた地域の人としか会話が出来ない事の方がはるかに劣っているが愚かな人間はそれに気づいていない。


「おっと!食いしん坊だなぁ。」
「キュウ!」
「あははっ、ごめんごめん、」


人間なんて、ただの食料生産をするカモだ。

彼は私を肩に乗せ上機嫌に冷蔵庫をあさりだす。フン、相変わらずチョロいな人間。


「あ、あった!」
「ジョット、何してんだ?」
「G!この子がお腹をすかせているから何かあげようと思ってね。」
「飼う気か?」
「飼いたいな!」
「ダメだ、もと居た場所に返してきなさい。」
「そんなこと言わないでよお母さん!」
「誰がお母さんだ!」


……この赤髪を落とせば全て丸く収まるという訳か。


「はい、トマトだよリスさん。」
「キュウ!」
「ありがとって!可愛い〜!!」
「こらジョット。」
「トマト美味しい?」
「キュウ!」
「きゃーー!可愛いよ可愛いよ可愛いよ!」
「キュ!」
「ん?」


食べかけのトマトを頭に乗せる。


「きゃわいいーー!!」
「キュウ!」
「ねーいいでしょ!?」
「誰が世話すんだよ、どーせ世話しないで結局俺が世話することになるんだろ!」
「ちゃんと自分で世話するから〜!」
「だーめーだ。」


大人しくトマトを食べる。…一個じゃ足りないな。でもまずはこの赤髪からだ。


「ねーG!」


とととっと赤髪まで飛ぶ。


「おわっ!」
「キュウー!」


ワイシャツにしがみついた。Gは私を掌にのせる。そして悩殺うるうる攻撃。たいていの人間はここで折れるものだ。


「キュウ…」
「うぐっ、」
「ほら、リスさんもお願いしてるしいいじゃん!」
「きゅあ〜」
「あ、あくびした!」


フリだけどね。そのまま奴の手の上で丸くなり、私のふわふわした尻尾を掌に滑らせた。


「……っ、」
「可愛いよ〜癒されるよ〜」
「で、でも、」
「ボス命令!」
「はぁ!?」
「たまには聞いてよボス命令なんだからさぁ、ほら右腕!」
「……はぁ。しかたねーな。」
「やったー!」


エサ確保!


「G!俺ゲージ買ってくる!!あと食べ物と、その子に似合うリボンもね!」
「こいつメスなのか?」
「多分!」
「おいおい…リス、起きろ。」
「あー折角寝てるのに…」
「キュウ…?」
「お前、オスか?」
「キュっ」
「……メスか?」
「キュウ!」


そして尻尾をふる。


「メスみたいだな。つーか人間の言葉わかるのか…。」


わからないのはお前らだけだよ。


「G、しょうがないからその子の命名権はGに譲ってあげるよっ!」
「じゃあリス子で。」
「ちゃんと考えて!」
「どーせ俺が世話することになるんだから呼びやすくて良いじゃねぇか。」
「ダメだよ!もう、俺がちゃんと考えてくるからリスさんにご飯あげといてね!!」
「はいはい。」


パタン、とジョットは外へと飛び出した。これでいいのか自警団。


「はー…、リス子いいじゃねぇか、なぁ?」
「いや、リス子はないだろ。」
「!!?」


あ……。


「キュウ〜」
「……なんだ気のせいか、そうだよな、リスがしゃべる訳ないよな…。」


危なかった…。私は人の言葉が話せるリスだ。何故だか分からないが話せるものは仕方ない。


「トマトでいいのか?」
「きゅ!」











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