Mermaid 11
日は暮れ、弥勒と珊瑚は楓の村を目指して西の方向へと帰っていった。


「サハラ今日どこ泊まんのー?」
「野宿だけど。」
「野宿!?女なのに!?」
「別に問題ない。いつも式神ついてるし。」
「いやいや、危険ってのもあるけどさ……。宿取れよ。」
「お金の無駄。」
「じゃぁっ!今日は俺と寝ようぜ!」
「妖怪のくせに宿?」
「いや、野宿だけど。俺といた方が安全だろ!」
「鋼牙といた方が危険だと思うんだけど。」
「え、なっ、スケベっ!」
「は?」


だって鋼牙夜見張れないでしょ絶対。―って意味なんだけど絶対違う方で取ってるな。


「今日は宿取るよ。」
「そんなに俺と居たくないのか!?」
「そーゆー訳じゃなくて…危ないし。」


鋼牙がいたらカイラ出せないし。


「ついでに風呂と夕飯も。」
「えー、いーなー!」
「………………。」
「いいなっ!」
「………はー…。解ったよ。今晩だけね。今日は、お礼だから。」
「?」
「友達作ってくれた。鋼牙みたいな図々しさと馴れ馴れしさとしつこさがなかったら絶対友達なんか作らなかったからさ。」
「なんか悪口に聞こえるんだけど。」
「当たらずとも遠からずかな。」
「何ー!?」


うん、短所でもあるけど今日は功を成してたね。本当はまだあるよ、鋼牙は頑固で鈍感で、寛容で優しい、凄くストレートだ。
私はあれこれ考えるタチだからあーゆーストレートな言葉や目には弱いんだよね。やっぱり仲間になる気は全くないけど、この出会いにはきっと意味があるはず。
弥勒や珊瑚達と合わせてくれた偶然のきっかけでもある鋼牙とは何か縁があるのだろう。明るい人間の近くにいるとこっちまで晴れやかな気分になるものだ。(鋼牙は妖怪か。)

カイラの事がなかったら仲間になってたかもね。
手足はいた方が便利だし、彼に特有の恨みもないし、折角「友達」になったのだからそれもアリだった。


「サハラ!俺達友達だろー?」
「?」
「友達って会った瞬間から友達だけど、もっとよく知り合った方が」
「あんたが言うと卑猥だよね。」
「そ、そんな意味じゃねーって!」
「何、私の事教えて欲しいって事?断る。」
「うぐっ…」
「でも話は聞くから。」
「!、…………おう!」


自分の過去の話。正直話すような事はない。誰かと過ごした思い出自体が少ないし…。毎日毎日一人、毎日毎日同じ事の繰り返し。
ふと、鋼牙の仲間になれば後で話せるような思い出がたくさん出来そうだな、なんて考えてしまった。



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