vampire 83
同じ頃、崖のはるか下の海では小さなぼろ船がポート・ロイヤルの港を目指していた。
船に乗っているのは、ジャック・スパロウという名の男。
黒い髪は肩にかかるほど長く、顔には不精ひげを生やしているが鋭い眼差しと精悍な顔立ちがはっきり見て取れた。
ジャックはバケツを掴むと船底にたまった水を汲み出す。


「ワオ。悪趣味ー」


ぼろ船が港に近付くにつれて処刑台にぶら下がる海賊達の死体が見えてきた。ジャックはよれよれの帽子を脱いで胸にあてると静かに祈りを捧げる。
港には巨大な空間、ドーントレス号が停泊していた。イギリスの軍事力と支配力を見せ付けるこの軍艦はポート・ロイヤルのシンボルにもなっている。
しかし、ジャックの視線はほっそりとした小型の帆船、インターセプター号に注がれていた。
インターセプター号はイギリス海軍専用の停泊場所に渓流されている。
活気にあふれた港はたくさんの船が錨をおろし、漁師の群れでざわめいていた。

ジャックは水が貯まって沈みかけている船から下りると細い桟橋にひょいと飛び乗り大股で歩き始める。


「おいそこの男、ちょっと待て!」
「んぁ??」


でっぷりとした年配の監督官が目敏くジャックに気付いて呼び止めた。
監督官には港に関わる様々な仕事や雑務をひきうけ、港に出入りする船や船乗り達を監督する義務がある。

ジャックは振り返った。


「港に船を停めるなら1シリングの停泊料を払うのが決まりだ。それに名前を名乗ること。」


監督官は言葉を続け帳簿を開く。ジャックはマストだけが海面から突き出た船に目をやり情けなそうな表情を浮かべた。


(あれでも停泊料を払うのか)


ジャックは上着のポケットから3枚のコインを取り出すと監督官が開いた帳簿の上に放る。


「じゃぁ3シリング出すから名前は聞くな。」
「……、ポート・ロイヤルへようこそ。」


監督官は眼鏡の奥からジャックとコインを見比べた後おもむろにそう告げ、ジャックはにんまりしながら軽く会釈すると崖の下に係留された帆船の方へ近付いていった。イギリス海軍が所有する快速船、インターセプター号である。



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