vampire 82
エリザベスSide


宝が獄寺に話をしているとき、エリザベスは馬車でフォート・チャールズへ向かっていた。
馬車の窓からポート・ロイヤルの港に停泊する軍艦、ドーントレス号の堂々とした姿が見えてくる。
切り立つ断崖の上に築かれたフォート・チャールズは敵や海賊から町を守り、港に出入りする船を監視する基地としての役目を果たしていた。


「っ……処刑台だわ……。」


港のはしに突き出た岬には処刑台があり、5本のロープが下がっている。そのうちの3本には首をくくられた海賊の死体がぶら下がっていた。
風雨にさらされた死体は既に白骨化し服もボロボロになっている。
5本目のロープには「海賊ども、お前達に警告する」と書かれた看板がかかっていた。





フォート・チャールズ

そして現在、宝達が人込みの中に入った調度それくらいの時、スワン総督とエリザベスは馬車を下りる。その頃にはカリブのぎらぎらする熱い日差しがフォート・チャールズに降り注いでいた。


「!!、エリザベス…お姉様……。」


新しいドレスを身につけたエリザベスは式典に列席した人々の中でも一際目をひく美しさ。
焼け付くような日差しと胸をしめつけるコルセットのしいで気分が優れないのかエリザベスの表情は冴えなかったが、一瞬にして宝はエリザベスに目を奪われた。

8年降りの彼女に、涙が出そうになる。


「綺麗に…なりましたね……。」
「………。」


宝がこの場にいるなんて夢にも思っていないエリザベスは額ににじむ汗を拭い、手にした扇で顔を仰ぎながらエリザベスはずっしりとした厚手のドレスを着て来た事を心から悔やんでいた。

同時刻、獄寺はスワン総督に軽く挨拶だけを済ませると、宝とともに式典の護衛を始める。


「日和、後でスワン総督とミス・スワンが会いたいそうだ。」
「え!?」
「もちろん日和の名前は出してねぇ。だが、十代目から色々日和の事聞いてたらしくて是非会いたいらしいぜ。」
「…了解。じゃぁ……私の事は………―――何がいいかな、名前。」
「"テミス"とかどうだ?」
「"テミス"…?」
「俺が一番好きな曲の名前。」
「じゃぁそれで!」
「わかった。」





しばらくして、式典が始まる。

二人は任務を開始し、エリザベスも気分の悪さを周囲の人々に悟られないようにけんめいに耐えた。

覚めないがあっていい





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