05



『終了〜!!!!』

プレゼントマイクの声が脳に響いた。
良かったこれで終わりだ。
終わったんだ……

「おい、おい! 死んだ!?」

ペチペチと私の頬を叩く。
目を覚ますと目の前には敵では無くさっきの子がいた。
心配そうな目で私を見てくる。

「生きてる……」

立ち上がろうとするが立ち上がれない。
何故?

「あれ、なんで? えっ」

「あ、ごめんそれオイラの個性なんだ。しばらくくっついたままだけど」

「えっ、なにそれ困る! でもありがと」

どうやらこの子の個性がクッションになってくれてらしい。
死ぬよりは全然マシだな。
てか私ずっと地面とくっついたままなわけ?
それはそれでやだ。

「こっちこそありがとな」

ぶにぶにとしたその子は他の受験者に救出されたらしい。
助けて助けられてしまった。
これではカッコはつけられないな。

「ううん、それは良いんだけど。これいつ外れるの?」

「多分半日くらいかかる」

「うっそ!」

半日ここで一人?
やだそれは絶対にやだ。

「……ごめん」

「なんか他に方法ないの!?」

「じゃあ皮膚にはついてないから服だけ脱げば?」

鼻血垂らしながら言うな!
でも一理ある。
ちょうど下はシャツに短パンだからいいか。

「そらいいね、じゃ脱ごうかな」

「っどぅぇ!? マジ!?」

「鼻血止めろ! 下にシャツと短パン履いてるから平気なの」

このエロガキはなんだ。
助けてやったのに。
まぁ私も助けられたんだが。

「あ、そうなのか」

鼻血止まったなオイ。
なんだお前の身体の構造どうなっていやがる。
てか私コミュ障のくせにこの状況のせいか話せてんな。


「はー、外れて良かった。ごめんねまたせて、皆行ったし行こう」

「だな、てか名前なに? オイラは峰田実」

「倉橋遥香、よろしく」

「てかお前の個性ってウサギになるの?」

「半分正解、私の個性は動物化で今のところ犬猫兎しかなれない」

「へーすげーな、それになんか萌えぐぅぇっ」

蹴りをいれておいた
あれ、受かるかどうかも分かんないのによろしくは変か?

小走りで会場を出た。

「今日はありがと、お互い受かってると良いね」

「そうだな、んじゃな」

そう言って峯田は言ってしまった。
それにしても片道30分は路線がまったく分からない私にとって最悪だ。
今日まで一人で電車に乗ったことがなく、家族や友達としか乗ったことがないのだから。

中2の時に鎌倉から自分の駅に帰る時、ケータイの電源も切れ唯一の助け人・お母さんとの連絡が途絶え。
道もなんにもわからないコミュ障の私は駅員さんに勇気を持って話しかけて見るも、ありがとうございますと言った挙句また聞きにいくのは恥ずかしかったから。
あの時はトイレで半泣き状態だった。
まぁ着いたんだけど。

そんなわけで電車は嫌いだが雄英を目指す以上、これは避けては通れない道なのだ。
電車が乗れないからと言っての登校拒否だけはしたくない。

「ふぅ……」

取り敢えずお母さんにメールしよう。
黒色のリュックからケータイを出す。
こう見えてLINEはやってるので、お母さんとの連絡も簡単にとれるから便利だなと思う。

〔試験終わったからこれから帰るね。いま電車にいる〕

送信っと。
そして可愛い猫のスタンプも送信してあげた。
わっ、もえ既読されたし返信きた。
なにやってんのお母さん……

〔お疲れ様、遥香の好きな抹茶プリン買っといたよ〕

〔よっしゃ! ありがと〕

なんて会話をピコピコと30分間ずっとやっていた。
駅に着いたので、LINEを切る。
早く抹茶プリン食べたいわー♪

と言っても私の家は駅の近くにある。
一軒家だ。

「たっだいまー」

「あ、おかえり。抹茶プリンそこ置いてあるよ」

「うん、手洗ってくる」

コートと荷物を床に置き、洗面所で手を洗った。
どうやら飼い猫のプリンが出ていた様で、私の足にすりすりと寄ってきた。

「ただいまプリンー、今日も可愛いなぁ」

まぁ抱っこしたくなるよね。
手はまた洗おう。

「シャー!」

「ぎゃっ」

プリンは私の鼻を爪で引っ掻くと、私の腕の中からするりと抜け出した。
ひどい……、まぁ何時ものことだけど。
そんなところも可愛い、やはり猫はツンデレだ。





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