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隠していた瞬間、


先生とか、坂田先生だとか、そいつを呼ぶ声がたまらなく嫌いだった。
色々隠そうとして、我慢していたみたいだけど、全部出てた。全部分かってた。

何でって、席近いからとか、分かりやすいからとか言えれば苦労しない。実際わかりやすいが。あいつの気持ちを全部知って、知っといてわざと傷つけるような言い方をした。
応援してやる、なんて言ってくれるとでも思ったかよ。隠されれば隠されるほど認めさせたくて、こじ開けた。そんな思惑も知らないであいつは、知らないって顔のまま。

バカ、天然、ボケ。
思いつく限りの罵倒を並べてみるけど、そんなお前の事が好きな俺が一番バカだ。

あの泣きそうな顔を見て後悔したって、逃げるように出た教室の先であいつにすれ違って、やっぱり真っ黒い感情が心をしめた。いつも笑ってるあいつをあんな顔をさせるしか出来なかった俺と俺が欲しくてたまらない表情をいともたやすく引き出す先生。先生と生徒、ムカつくあいつと好きなあいつ。全部全部、腹が立つ。

「おい」
「......」
「おいこら」
「んだよ、風紀委員の犬」
「黙れヤンキー」
「今虫の居所が悪ィんだよ」
「知るかさっさと戻ってこい練習始まってんぞ」
「...ちっ」

副委員長だか副主将だかの言いなりになるのは御免だがこのまま帰るのも不完全燃焼で気分が悪い。どうせなら剣道部の連中をボコボコにしてから帰るか。なんて横を通り抜けた瞬間に「おい」とまだ引き止められた。

「んだよしつけぇな」
「お前何かあったのかな」
「......は?」
「だから、何かあったのかっつってんだよ」

何かあった?
何もねぇよ、なんでお前が、お前なんかがそこに気付くんだよ。俺わかりやすくも何ともねぇだろ、あいつみたいに。うまく隠せてるだろ。

「...気持ち悪ィ。いきなり何だ」
「お前がそんなだと総悟も残念がんだよ」
「言ってろ、お前諸共のしてやる」
「舐めんなこちとら毎日居残りで素振りしてんだよ」
「はいはいそーかよ」

隠していた嫉妬を、見せないようにした黒い感情をぶつけられた事もきっとお前は知らないまま。

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ちなみに高杉と会話してるのは土方くんです。


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