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何か今日は具合が優れなくてごろんと縁側に横たわって一眠り決め込もうと思ったらふ、と影がさす。ダルい体を動かして目を開ければ沖田隊長がしゃがんでこちらを見ていた。

「こんなとこで何してんでィ」
「隊長だっていつも昼寝してるじゃないですか」
「てめぇまでサボったら誰が仕事するんでさァ」
「いい加減はっ倒しますよ」

誰のせいで自分の規格外の報告書と始末書をいつも作成してると思ってるんですかと文句を言ってやろうとしたが隣に横たわる隊長を見て文句を言う気も失せた。アイマスクまでして人の話を聞く気ゼロの体勢だもの。寝る気満々だもの。
私だって働いて疲れてるんだから休ませてくださいよ、非番の日にも情報を集めて基本休みないんですから。なんて、それは好きでやってるから何も言えないけど。右隣に温もりを感じながら再び目を閉じると、

「おいてめぇら…昼間っから何サボってんだ」

地を這うような低い声が聞こえてきてまたかよ、とうんざりしながら目を開けば案の定と言うかなんと言うか副長が立っていた。

「私疲れてるんですけど」
「知るかコラ」
「俺もダルいんでさァ」
「お前は年中だらけきってんだろーが!!」

あー…もうこの屯所には安眠できる場所がない。
仕方なく体を起こして仕事に戻ろうとするが視界がクラっとして思わず柱に手をつく。あれ、本格的に気持ち悪い。私の様子に気付いた副長は倒れそうになった体を支えてくれた。

「おい、名字?」
「気持ち、悪いです」
「ほら土方さん。マヨ臭ェ手で触るから〜」
「どういう意味だコラ!!」

そうじゃねぇよ、と口に出すのも面倒で黙っていたらぺちっとおでこに副長の手が当てられた。
何だか妙に冷たくて気持ちいい。

「……お前熱あんじゃねぇか」
「…………まじですか」
「今日はもう良いから寝てろ」
「嫌です」
「はぁ?ぶっ倒れたらどうすんだ」
「私の部屋沖田隊長のイタズラでSMグッズで溢れてるんです、お店開けますよあれ」
「どういう嫌がらせ!?精神的にくるやつ!?」

そんな部屋で寝るのが嫌で一晩中部屋の隅っこですみっこ暮らしの気持ちを味わっていたのがダメだったのかな。当の本人は音楽プレーヤーで耳を塞いでるしイヤホン引きちぎるぞ。あ、でも今はダメだ、気持ち悪い。

「っ……おい!」

ふ、と電気が切れたみたく暗くなる視界の中で私は意識さえも落としたみたいだ。
再び目を開けた時には見慣れない天井があって、体に馴染んでいない布団がかけられていた。ここはどこだろうと顔だけ動かせばある匂いが鼻をくすぐる、

「……タバコくさい」
「悪かったな」

素直に思った事を口にしたら頭の上から降ってきたぶっきらぼうな声に今度は目だけ動かすとタバコをくわえた副長があぐらをかいて座っていた。そして私の額に手をあてると「下がったな」とそのままわしゃわしゃと頭を撫でられる。

「本当にぶっ倒れるからビビっただろーが」
「あー…すみません」
「今清蔵にお前の部屋を掃除させてっからそれまでここで寝てろ」
「ここ副長の部屋ですか」
「タバコ臭くて悪かったな」
「根にもたないでくださいよ」
「とっとと寝てろ病人」

べちっとおでこに冷たいタオルを乗っけられて火照った体が少しだけ楽になる。よく見れば床には書類が散らばっていていつも山盛りの灰皿には古い吸殻が数本入っているだけだった、……一応遠慮してたのかな。仕事しながら看病って、鬼の副長のくせに。タバコくさいけど今は少しだけ落ち着くなんて思って笑ってしまった。

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