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「なるほど、地雷踏んで頭打って中身が五歳児になったと。信じがてェ話ですねィ」
「実際名前ちゃんがあれだからなぁ」

中身が五歳児になった名前に本気で泣かれて拒絶されて思いの外ダメージが大きかった近藤は頬を伝う涙を拭わずに未だ山崎に抱きついている名前を遠くから見つめる。

「それにしても何で山崎にあんなにベッタリなんですかィ?」
「最初にあやしたらなついたんだよ。俺と近藤さんは近付いただけで泣きやがる」
「近藤さんはともかく土方さんはそりゃダメでさァ。瞳孔開いてる奴なんてアウトに決まってらァ」
「部屋に地雷仕掛けた奴に言われたかねぇ!」

沖田は怒鳴る土方を無視して立ち上がると山崎に抱きついている名前の顔が見える角度に回り込み顔を覗いた、いきなり目の前に現れた初めて見る顔に体をビクリと震わせる名前の怯えた表情に沖田のイタズラ心がうずく。

「おい山崎、そいつ貸せ」
「え、いやでも」
「や、いや……」

ふる、と首を横に振ってより一層山崎に抱きつく名前にイタズラ心は段々と形を変え始め征服心へとなっていった。
黙りこくる沖田に近藤は不安を募らせる。

「なぁ、名前ちゃん総悟のスイッチ入れちゃいねぇか?」
「いやまさか……」
「お前はそんなにそいつが好きなのかィ?」
「ん……さがるお兄ちゃん、やさしいから、好き…」

普段ならば絶対に言われないような言葉を至近距離でしかも頬を緩めながら言われた山崎の顔は真っ赤に染まり思わず口元を隠した。それを見た沖田は唇をクイッと上げ不敵な笑みを浮かべると名前の顎を掴む。

「調教して総悟お兄ちゃん大好きって言わせてやりまさァ」
「てめぇは五歳児相手に何しようとしてんだァァア!!」

聞き捨てならない言葉に土方は駆け出して沖田の脳天に踵落としを食らわせた、沖田は頭をさすりながら土方を見ると「なんでィ」と固まる名前を指差す。

「その五歳児に自分の着物着せて喜んでる変態は引っ込んでてくだせェ」
「違うわ!こいつがいつもの着物の着方わかんねぇっつーから貸したんだよ!!」
「いやーさすが土方さんだ、マニアックすぎてついてけねぇや」
「五歳児にマジで調教しようとしてる奴に言われたくねぇ!」
「ちょ、隊長も副長もあんまり大きい声出したら……」
「っ、うぇ……うぁああ!」

山崎の制止もむなしく大きい声に驚いて再びぐずりだす名前を見て不毛な言い争いは一先ず終息する。
山崎は名前が泣き止んだのを見計らって膝に乗せると一人一人指差して名前を教え始めた、おかしな違和感は拭えないがいつまでも警戒されては話も進まないので三人ともとりあえずは大人しく座る。

「この人は沖田総悟さん、隊長だよ」
「……そうごお兄ちゃん?」
「そう、それでこの人が土方十四郎さん」
「とーしろーお兄ちゃん」
「そうそう」

山崎に頭を撫でられて名前は嬉しそうに微笑む、子供ゆえに浮かべるめずらしい表情に山崎や近藤はじんわり癒されていたが土方は拭えない違和感に顔を引きつらせた。

「なんか、怖ェな」
「そうですかィ?」
「それでこの人は近藤勲さん、局長だよ」
「……いさおおじさん?」
「お兄ちゃんじゃないんだ!!」

想像していたのと違う呼び名に思わず床に手をついて嘆く近藤に名前はおずおずと話しかける。

「おじさん、ダメ?」
「俺ってそんなに老けてる!?」
「気にすんなよ近藤さん、子供からしたら俺らはそう見えんだろ」
「そうですよ仕方ありやせん、ねぇ土方くそじじい」
「黙れクソガキ」
「副長も隊長も名前ちゃんの前で汚い言葉使わないでくださいよ、真似したらどうするんですか」
「何でてめぇはいきなり母性に目覚めてんだよ!!」

五歳児になった名前をあやすうちに新しい扉を開けたらしい山崎に軽く引く山崎や沖田だが、山崎にベッタリな名前を見てつい黙ってしまう。名前はしばらく静かにしてがやがて山崎の隊服をクイクイ引っ張り出した。

「ん、どうしたの?」
「さがるお兄ちゃん、わたしのお姉ちゃんどこ?」
「あ……」
「どこにいるの?」

中身が五歳児になってしまった名前の中ではまだ姉と暮らしている事になっている、素朴な疑問をぶつけたつもりだったが山崎は困惑してしまった。助けを求めて土方を見るが静かに首を横に振るのを見て名前の肩を優しく掴んで笑いかける。

「君のお姉さんはちょっと出掛けてるんだ」
「いつもどってくるの?」
「それは、分からないけど……良い子にしてたらきっとすぐ戻って来るよ」
「……ほんと?」
「うん」
「なら、わたしいい子にしてる」

寂しそうに笑う名前にチクリと良心が痛んだ山崎だが仕方ない事だと思いよしよし、と頭を撫でてやる。名前は幼い心に芽生えた不安や寂しさをまぎらわせるようにぎゅっと山崎に抱きついた。山崎はニコッと笑ってわざと明るい声で名前に話しかけてやる。

「よしっ、名前ちゃん!何かして遊ぼうか!」
「ん!」
「俺も混ぜろ山崎」
「はい、って隊長首輪を出さないでください!はいしまって!!」
「やだね」
「総悟!てめぇは仕事だ!!」
「トシ、俺も名前ちゃんと遊びたい」
「仕事しろ!!」

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