×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

桂くんを待って約5分、なんと人生初のナンパに引っかかってしまった。時間通りに来る彼にしては珍しい遅刻、めずらしいなぁなんてぼんやり考えていたらまさかこんな目にあうなんて思っていなかった。常日頃から「いいですか名前、ナンパに合ったら決して目を合わせてはいけませんよ。彼らは目が合ったらいけると思うような人種ですからね」と先生に口酸っぱく言われているから必死に目を合わせないようにと俯いているけれどそれもそろそろ限界が近い。

「そんな下向いてないでこっち向いてよー」
「………」
「食べたいものない?近くにオシャレなカフェあるんだけど」
「だ、大丈夫です」
「あ、ご飯系の方がいい?」

日本語が通じない。
彼の心臓は鋼仕様なんだろうか。
スマホを握りしめながら早く桂くん来ないかなと考えていたら「こっち見てよ」と顔にかかっている髪に手が伸びてきた。
嫌だ、どうしようと固まっていたらその手は髪に触れる寸前で止まる。

「桂君…」
「あ?誰、きみ」
「そういうのはきちんと俺を通してからにしてもらおうか」
「なに、彼氏持ちかよ」
「ああそうだ。人の彼女に手を出すのは感心しない」
「つまんないの」

そう言ってあっさりとナンパは踵を返して人混みへと消えていく。
というか桂君、今彼氏って。

「遅くなってしまってすまない」
「う、ううん。助けてくれてありがとう…」
「怪我はしていないな?」
「平気だよ」

分かってる、ただ単に追い払うためについた嘘だってことぐらい。
それなのになんでその言葉一つに私は今こんなに緊張しているのか、この鼓動の速さは何なのか。分からない、分からないけど。

「らび?」

顔を覗き込んでくる桂君がいつも以上にかっこよく見えてまた顔を上げられなくなってしまう。下を向いている私をどう思ったのか桂君は少し困ったような顔で「具合でも悪いのか?」と額に手を当てられた。

「熱はないようだが顔も赤いぞ、今日は本屋に行かずに帰った方が…」
「だ、大丈夫!本当に大丈夫だよ!」

今日は、変。
何でかまともに桂君の顔を見れなくて、繋がれている手もひどく暑くてじんわりと頬に灯った熱はしばらく消える気がしなかった。

*前 次#