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高杉が斬られた、坂田君にそう告げられてから頭の中で理解するのにかなりの時間を要した。
辰馬さんに俵担ぎにされて運ばれてきた高杉君の背中は真っ赤に染まっていて私の頭は真っ白に塗りつぶされた。

「ああ、安心しろ。こいつ足も怪我してて担がれるのが嫌だって暴れるから気絶させただけだから、実際ピンピンしてっから」
「うむ、斬られたとは思えない怒りっぷりだった」

桂君や坂田君は私を安心させようとしてくれているのか茶化すような口調でそう言うが私はざわめく心を沈めることが出来ないでいた。
とりあえず辰馬さんに自分の寝床まで運んでもらって手当てを始める、足の怪我の血は止まっているが右肩の傷はまだ止まっていない。
消毒液をかけても微動だにしない高杉君にどんな風に気絶させられたのか色々心配になってきた。

「…………大丈夫かな」

青白い顔を見つめながらそっと額に触れる、寝顔が綺麗すぎて怖いよ。
起きて、高杉君。文句でも、悪態でも、何でも良いから。しゃべって、動いて、……目覚まして。

「高杉君……」
「…何だよ」
「!!」

驚いて額に触れていた手をどければ、高杉君がうっすらと目を開いてこちらを見ていた。

「大丈夫?具合悪くない?」
「別に……い"っ!?」

すました顔で起き上がろうとした高杉君の顔が歪む、そして首の後ろ辺りをおさえてまた横たわった。……あ、気絶させたって言ってたっけ。

「っ…銀時の野郎……本気でやりやがっ、……っ殺す…!」
「ま、まだ動いたらダメだよ……!」
「動きたくても動けねぇよ…」

そう言って高杉君は布団に仰向けになってグッタリとする。その額には大粒の汗がいくつも浮かんでいて、それを拭ってあげようと伸ばした手が高杉君の熱い手に掴まれ驚く間もなく世界が反転する。気づけば背中には固い床、目の前には高杉君の包帯しか巻かれていない上半身があった。
そして高杉君がそのまま倒れこんでくる。熱い体、耳にかかる吐息まで熱い。あれ、これもしかして……

「高杉君、熱出てるんじゃ……」
「あ?」
「熱いよ?」
「……体がダルいのはそのせいか…くそ」

斬り傷による熱、傷口も痛むだろう。
グッタリと自分に寄りかかる彼はいつも凛としてる姿とは大違いで、ひどく胸が締め付けられた。

「…………」
「おい、いきなり静かに……」
「…痛い?」
「……てめぇに心配されるほど重傷じゃねぇよ」
「私、高杉君は…強いから大丈夫って、……思ってた、だから……本当に…心配した……!」
「大丈夫だろ、こうしててめぇとしゃべってんだからよ」
「でも……!」
「ったく…」

高杉の指が頬を拭う。
涙と一緒に拭ったのは手当てした時についた血だった。

「まだやらなきゃいけねぇ事はあんだ、先生を助けるまで死なねぇよ」
「……うん」
「それに、こんな泣き虫残して死ねるかよ」
「…………約束」
「いくらでもしてやるよ」
「……えへへ」
「らび」
「……ん?」
「このままここにいろ、俺が寝るまで」
「……うん、いるよ」

小指を絡めて、そっと目を閉じる彼の頭をあの人がしていたように優しく撫でた。

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