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※どうせなら1歩進んでみませんかの続き

薄暗くなった部屋の中で一人煙管に火をつける。小さく儚い火でもこの暗い部屋を照らしていて、隣で無防備に眠りこけている女を映し出していた。露になっている肩に布団を引き上げれば微かに身動ぎをして俺の手を掴む。

「……おい」
「ん、……」

また穏やかに寝息をたて始めるなまえにこれ以上呼び掛けても無駄だと再び煙管に口をつけた。

肌を重ねたのはほんの数時間前。
自分は初めてではないがこいつにとっては俺が初めての相手で、怖がっていたのはよく分かっていた。始める前も、最中も、終わってからもこいつはずっと泣いていたがそれでも受け入れようとするんだからこいつはほんとにタチが悪い。
火をつけたばかりの煙管を置き、自分も布団の中へと体を滑り込ませてなまえを腕の中へとおさめる。本能で人肌を感じ取ったのかすり寄ってくるなまえは何も着ていないためきめ細かね柔肌の感触が直接伝わってきた。

「…………」

傷が残る自分の体とは対照的に、傷一つない…と言いたい所だが肩口に残る刀傷が目に入りそうだったといつだかなまえが斬られたんですと話していたことを思い出す。人差し指でその傷をなぞると、その感触は自身の体に残る刀傷のそれと変わらない。しばらくそうして傷痕をなぞっていたらなまえの睫毛がふるりと震えた。

「……」

起きるか、寝るか。
どちらになるか見ながら後頭部を撫でればそれに反応したのかゆっくりと目が開き黒い瞳が俺を映す。

「た、かす…さ、ん」
「あァ…」

ゆったり、そんな言葉がしっくりくるようなしゃべり方で話すなまえはまだ半分夢の中だった。
眠気をたっぷり含んだ話し方で「いま、なんじ……ですか?」と聞きながら俺の手に頬を擦り付ける。
指で頬を撫でながら部屋に一つだけ置いてある小さな時計に目をやれば、針は4時を指していた。

「朝方だ」
「ん、…ろくじに、なったら……だいどころ、……ごはん、」

単語だけをポツポツともらし何を言っているのか分からなかったが、炊事係になったこいつはこんな日にまで仕事をしようとしているのかと理解してまだむにゃむにゃと寝言ともとれる事を言っているなまえの額に唇をおとす。何をされたか分かっていないのを良い事に瞼や頬にも同じことを繰り返した。

「……今日ぐらい余韻に浸らせろ」
「……?」

どうせお前はもう一度寝たら全部忘れんだろ。
だったら、今を俺が焼き付けたい。寝惚けているなまえの白い首筋を撫でて痕をつけんばかりに強く吸い上げる、

「い、た……」

……これでもまだ寝惚けてんのか。

ふるりと震えて腕を首に巻き付けむぅ、という効果音が似合う顔で俺を睨んできた。不機嫌満載な顔が何故かおもしろくて思わずくくっと笑えばぐりぐり鎖骨辺りに頭を押し付けてくる、小さい子供みたいだな。やがてその動きが止まると小さな寝息が聞こえてきた、どうやらこの体勢で眠ったらしい。

「おい、寝るのかよ」
「……すー、すー」

まさに蛇の生殺し。
寝ると同時に力が抜けて緩んだ腕を外して再び腕の中におさめる。心なしか先程より緩んだ顔を眺めゆるく襲ってくる眠気に身を任せようと艶やかな亜麻色の髪に頬を擦り付けた。

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