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そいつを助けたのはほんの出来心ってやつだった。強姦されそうな女をいちいち助けるような暇はないし自分はそんな人間でもない、ただちらりと目に入った亜麻色に心がざわついて気が付いたら女を組強いている男の背中を斬りつけていた。仕方ないから男を退かして女を起こそうとするとあろうことか恐怖のあまり気絶しているではないか、放っておいても良かったがやっぱりその亜麻色を見るとそのままにしておけなくてせめて女の目が覚めるまでは待っていてやろうと腰を下ろす。

「ん、……」

しばらくすると女は目を覚ましてゆっくりと体を起こした。
きょろきょろと周りを見て自分がどんな目に合っていたのか思い出したのか顔を青くして手を握りしめ、俺の存在に気付いたのか短く悲鳴をあげると後退りした。

「……」
「あの男はもういねぇ、だからお前もさっさと消えろ」
「……あなたが助けてくれたんですか?」
「目障りだっただけだ」

冷たく吐き捨てたつもりなのにその女はふわ、と微笑むとあろうことか「ありがとうございます」と頭を下げた。

「……人の話を聞いてなかったのか。とっとと消え、」
「私ぼーっとしてるから…ほんとにありがとうございます!あの、私あそこの角で茶屋をやってるんです、もしよろしかったらお礼に……」
「いらねぇっつってんだろ」
「……いつか、気が向いたら来てください。待ってますから」

この女の頭に警戒という言葉はないのか。
学べ、男を簡単に信用するな。
こいつが消えないなら自分からいなくなってやる、と立ち上がり背を向ける。ちらり、と振り返ればその女は真っ黒な瞳でこちらを見ていて、

「…………気が向いたらな」
「!、はい!」

気づけば、果たせるか分からないバカげた口約束をしていた。

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