2人の距離

真選組に入隊し、半年が過ぎようとしていた。

救護隊の隊員さん達もいろいろお勉強をしてくれてるみたいで、簡単な応急処置くらいは出来るようになっていた。
隊士のみんなは教えをちゃんと聞いてくれるし、なんの問題もないのだが最近悩んでいる事がひとつ。


「華さーん。もう上がりでしょう?デートしやしょうぜ、デート」


沖田隊長だ。
沖田隊長は、本当によく絡んでくる。
私をおもちゃみたいに思ってる?それとも...私に好意を寄せてくれてる?ちょっと自身過剰かもしれないが、そう思わせる言動が多い気がする。


「華さん聞いてやすかィ?」

「あ、すみません。デートですね。いいですよ」


目をパチクリさせて驚く沖田隊長。
相当かわいいんですけど。


「いいんですかィ...?」

「沖田隊長も、もう上がりなんでしょう?夕食でも食べに出かけましょうか」


着替えをしたかったので、30分後に屯所前で待ち合わせをした。
さて、男の子と出かけるのは久しぶりすぎて何を着て行けばいいのか分からない。
ピンクって歳でもないし、紺だと地味だし。
タンスをひちゃかちゃにしていると、丁度良さげな着物。
濃い紫に、淡いピンクの蝶柄。
これだったら歳相応だし、地味でも派手でもない。
着物を着てお化粧を直すともう約束の時間。
慌てて門の前に行くと沖田隊長の姿があった。


「お待たせしました」


沖田隊長も今日は私服で、いつもと違う雰囲気だ。


「華さんの着物姿新鮮ですねィ。似合ってまさァ」


いつもと違う雰囲気にドキドキしてしまう。
とりあえず歩き出すが何処に行くのだろう。


「何処か行きたいトコありやすかィ?」

「そうですね...」


行き先を考えながら並んで歩いていると


「ご主人様ぁ!!」


目の前にはミニの着物姿にツインテールの可愛い女の子。なぜか首輪をしてる。
...ご主人様って沖田隊長の事?


「アンタは...」

「お久しぶりです。丁度江戸に遊びに来てまして!ご主人様に逢えるなんて嬉しいです!」


なんか、もやもやする。
この女の子と沖田隊長が並んだらすごく絵になってたから。


「ご主人様に貰ったこの首輪。今も大切にしてるんですよ!」

この子は沖田隊長の元カノかなにかなのかな...?
女の子の笑顔は眩しくて、沖田隊長に好意を寄せているのが分かる。


「あの、沖田隊長。私、失礼しますね?」

「...なんでですかィ?」

「邪魔しちゃ悪いし」

「えーっ?いいんですか?」


女の子は、沖田隊長の腕を組み喜ぶ。
あぁ、やっぱ私は邪魔だったみたい。


「おい、雌猫。手を離しなせェ」

「沖田隊長。女の子に対して可哀想ですよ。私は大丈夫ですので失礼します」


待って下せェと呼ぶ声がしたが、無視をして歩く。
なんか...イライラする。
このイライラは、ヤキモチじゃないぞ。と自分に言い聞かせ、たまたま見つけたBARに入った。


「いらっしゃいませ」


お店の中は暗めで感じが良かった。
BAR店さんは、40代くらいのおじさま。


「とりあえず、ビールをいただけますか?」


お店にお客さんは少なく、すぐに注文とチャームが出て来た。


「お姉さん、始めましてですよね?」


こんなに綺麗な方、1度来たら忘れませんから。とお世話を言うマスター。
マスターと話しが弾み、お酒が入った事もあり、気がつくとさっきの話をしていた。


「ほぅ...彼と元彼女の遭遇ですか」

「まぁ、彼氏ではなく上司なんですがね」


元カノに、ご主人様って呼ばせてて、首輪までプレゼントしてるみたいなんですよまぁ、部下の私には関係のない事なんですがね。とマスターに愚痴る。
発言した後になんて事を言ってるんだと思ったがマスターが聞き上手で、お酒も入っているため口は止まらない。


「なるほど...貴方はその上司さんが好きなんですね」

「そっ、そんな事」

「まぁ、第三者の私が言える事ではありませんが、ただの上司ならば...異性と話してる姿を見てイライラしたりしないと思いますよ」


何も言い返せなかった。
確かに私はあの女の子と沖田隊長が話す姿を見たくなかった。
あの場にいたくなくて...逃げだした。


「答えが出たみたいですね。景気付けに一杯奢りましょう。何を飲まれますか?」

「悪ぃ嬢ちゃん、いまの話オレにも聞こえちまった。オレからも一杯奢らせてくれや」


カウンターの知らないおっさんからも後押しされた。なんか、分からないが後には引けない。


「...テキーラショットで!!」

「気合いが入ったみたいですね。頑張って下さい」

「恋愛は、直球勝負に限るぜ。女は度胸だ」


テキーラ2杯を一気に飲み干し、お金を払いマスターと、カウンターのおっさんにお礼を言い店を出た。
あんな小娘に沖田隊長を取られたくない。
わたしは、沖田隊長が"好き"なんだ。

沖田隊長を探しに歌舞伎町をうろついていると銀さんに遭遇した。


「よぉ、華ちゃんじゃねーか。何をそんなに慌ててんだ?」

「あの、沖田隊長見ませんでした?」

「あぁ...さっき、公園の辺りで...」

「ありがとうございます!!」


猛ダッシュで、公園へ向かう。


「あの...なんで着いて来るんですか?」

「なんとなく?」


帰って下さいよと、いう前に公園に到着。
沖田隊長を発見出来たが...あの子も一緒だった。


「何隠れてんの?」

「な、なんとなく?」


心の何処かで私を探してくれてるんじゃないかって思ってた。
自身過剰にもほどがあったな...私。
遠目で見ていても、やっぱりお似合いな2人...。
心なしか顔が近い気がする。


「華ちゃん!!ちゅうじゃね?アレ、ちゅうしそうじゃね!!??」


銀さんの一言で、目の前が涙で滲んで何も見えなくなった。
せっかく気づけたのに...。
頑張ろうと思ってたのに...。


「アレ?華ちゃん泣いて...」

「銀さん..........吐く」


おぼぼぼぼぼと、吐いた後、銀さんの叫ぶ声がして私の記憶はそこで途切れた。


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