#非日常への幕開け

越前華20歳。
職業、キャバ嬢。
歌舞伎町に住んでいるという事もあり、デンジャラスな事件に巻き込まれる事は多いが、私の回りの人間と比べると平凡で凡人な私。
ある1通の手紙から私の人生が狂う事になるとは、この時想像すらしていなかった。




許嫁1



『ちゃん....あ.....とそ......は...いいな.....なの......ちゃん.....頼んだわ.....』


夢を見た。
なんだか懐かしい夢を見た気がするが、夢なんてものは、起きると大概忘れているもの。
どんな夢だったか思い出そうとしたが二日酔いらしく頭が痛い。
その痛みを紛らわせるために、熱めのシャワーを浴び、コーヒーを入れた。
コーヒーをドリップする間に郵便受けへと足を伸ばす。
郵便受けには、朝刊と大量の風俗関係のチラシ。さすが歌舞伎町。
朝刊を手にとり、設置してあるゴミ箱にチラシ類を捨てていく。
捨てようとしたチラシの中かから、1通の手紙がでて来た。
危なく捨てるところだったよ。と心の中で一言。
差出人は

『沖田ミツバ』

懐かしい名前に少し焦る。
手紙と朝刊を持って家の扉を開けた。
部屋からはコーヒーの香り。
マグカップにコーヒーをそそぎ、一息つく。
手紙の差出人の沖田ミツバさん。
ミツバさんは、わたしがすごくお世話になった人。一人っ子で母親を早くに亡くした私を可愛がってくれていた。
歌舞伎町に住み出して2年。ちょくちょく電話はしていたが、手紙が届いたのは初めてだ。
少し、嫌な予感がしつつも手紙に目を通しす。


『拝啓、ご無沙汰しておりますが、お元気でお過ごしのことと存じます。急にお手紙が届いて驚いたんじゃないかしら?貴方の元にこの手紙が届いたという事は、私はこの世に存在していないということになるわ。』


手紙の冒頭でこんなに衝撃を受けることになるとは思いもせず、手が震えた。
ミツバさんが、この世に存在しない...?
確かにミツバさんは、身体が弱かった。だけど、そんな事って.....。
目の前が涙で滲んで手紙の続きが読めない。
ミツバさんが最後に残してくれた手紙。きちんと読まないと。ティッシュで目頭を抑え自分の中で気持ちを整理して手紙の続きに目を通す。


『私がこの世にいない事に悲観しないでね。仕方の無い事だったの。
あなたにお手紙を出したのは、他でもありません。単刀直入に言うと私の弟総悟と、華ちゃんには結婚してもらいたいの。これは、お互いの両親も望んだ事なのよ。小さい頃に約束した事だから覚えていないかもしれないけど、貴方達2人は許嫁同士。いきなり結婚しろと言われても戸惑う事と思いますが私の中で決定事項だから。結婚しなかったら毎晩枕元に出るから。....なーんてね(笑)
総ちゃんは、ぶっきらぼうで、ふてぶてしくて、不器用な子だけど、私の自慢の弟です。総悟をよろしくお願いしますね』


ん?
あれ?涙で目が滲んでたせいかな?
よく分からない事が書いてあったような。
なんか、結婚がどーとかこーとか。
れ、冷静になれ私!今までシリアスやってきたんだから、シリアスで通そう!!


ゴホン。

ミツバさんが最後に残してくれた手紙。きちんと読まないと。ティッシュで目頭を抑え自分の中で気持ちを整理して手紙の続きに目を通す。

『私がこの世にいない事に悲観しないでね。仕方の無い事だったの。
華ちゃんにお手紙を出したのはお願い....「ってやっぱり手紙の内容一緒かよぉおおぉぉ!!!!!」


一人でノリツッコミしちゃったよ!!!!
え?結婚?許嫁?あ、血痕?いいな漬け?
あ...あはははははは........

念のためもう一回手紙を読み直したが、やっぱり結婚しろという内容。
ミツバさんの最後の願い。聞いてあげたかったけど、こればっかりは無理です!!
沖田総悟.....忘れもしない。
幼少期、アイツに関わって何度も三途の川を渡りそうになったのだ。
そんなトラウマ野郎と結婚....?
ないないない!!私の命が何個あっても足りない!!!!!

あ、手紙...2枚目がある。

『許嫁って言うのは、冗談で』

なんて、書かれてないかなと期待したがその期待はすぐ打ち砕かれた。


『PS.総ちゃんは、江戸の真選組という所で働いています。
PSのPS.許嫁の約束をした証文を一緒に同封してます。』


封筒をよく見ると、中にボロボロの半紙が。
恐る恐る開くと子供の字で

『しょうらいけっこんします』

の文字。そして私と沖田総悟の名前、おまけに小さな手形がベタベタ押してあった。
どうする?どうする?どうする?
頭の中はパニック状態。
日ごろ悩む事のない私の頭はパンクして、バーンってなりそう。むしろバーンってなって記憶喪失になりたい。

どうしようか考えたが、まとまらずただ出勤までの時間が近づいた。

.....とりあえず、化粧しよ。

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