少女は何もかもが信じられなくなっていた。周りの大人は自分に酷いことばかりする。両親ですら自分のことを捨てた。甘くも明るくもない過去に縋り、毎日をやり過ごす日々を終わらせたかった。何もかも燃やし尽くしてしまいたかった。
少女を変えたのは一人の青年。だが彼もまた、心に闇を抱えていた。燃やしても燃やしても、解けない氷の中に閉じ込められた憎悪。青年は怒りを両手に宿しながら毎日を過ごしていた。そんな彼の氷を解かしたのはあの時の少女。そして青年を変えたのはその一人の少女であった。
XANXUSはソファに座り、いつものようにウィスキーを飲んでいた。そんな彼に凭れ掛かるようになまえは隣に座っている。彼女の手にはフォトフレームが握られていた。
「この写真好きだなぁ」
そこにはXANXUSとなまえが写った写真が入っていた。沢田奈々にウェディングドレス姿を見せる為に、関係者のみで静かに行われた挙式の際に撮られた写真である。二人の後ろには沢田家光や綱吉、九代目もしっかり写されていた。
「あの時は本当にありがとう」
そう告げたなまえの頭をXANXUSは優しく撫でた。当時はなまえがどうしてもとお願いしたので仕方無しに出たが、これほど喜んでもらえるなら嫌々ながらでもおこなって良かったと、XANXUSは今更ながら思った。
「ザンザスさん」
「なんだ」
「これからもずっと傍にいたい」
今日は彼等の結婚記念日である。毎年この日は必ずこの台詞を言うのが当たり前になっていた。XANXUSはウィスキーの入ったロックグラスをサイドテーブルに置き、なまえの腰に腕を回した。
「当たり前だ」
ぐっと腕を引き寄せ、きつくなまえを抱き締めるとXANXUSは彼女に口付けた。
物語は終わっていない。寧ろ始まったばかりである。これはなまえとXANXUSの終わらない永遠のおはなし。