目は口ほどに…(出逢えた幸せSS) | ナノ
■ (3/4)

「透さん、もう……」



そう言いかけながら、俺に擦りつけるように腰が僅かに揺れている。



「もう…?どうして欲しいの?」



訊かなくても分かりきっているけど、言わせたい。



「…ッ、透さん、今日はなんか意地悪だ」



半泣きになった顔が可愛くて、つい笑い声を洩らしてしまう。



「ごめんね。でも、言ってくれないと分からないよ。どうして欲しいの?」



汗に濡れた前髪を指で梳いて、その瞳を覗き込むと、瞬いた途端に目尻から涙が一筋零れ落ちた。



「もう、挿れてほし……」



ちょっと意地悪し過ぎたかな。



「ごめんごめん、ちょっと待ってね」



直くんから身体を離して、ベッドサイドチェストの引き出しから、ローションとゴムを取り出すと、



「透さん、それ付けないで。」と言って、直くんが腕を伸ばして、俺の手を止めた。



「でも、後が辛いでしょう?」



と躊躇する俺の手から、直くんはゴムを取り上げると、ベッドの端へ放り投げてしまう。



「いいんだ、今日だけ特別。ね?いいでしょ?」



そんな風に、上目遣いでお強請りされると、ちょっと嬉しくて、駄目だとは言えなくなってしまう。


もしかしたら、そんなことを考えてる俺のことを、言葉にしなくても直くんには見抜かれているのかもしれない。



「分かった。でも今日だけだよ」



と、俺は、直くんにだけにではなくて、自分にも言い聞かせるつもりで言いながら、掌の温度に馴染ませたローションを指に纏わせた。


横向きの体勢で、背後から身体を抱えるようにして、後孔に指で触れると、直くんが肩越しに振り返る。



「透さ、ん」



「ん?どうしたの?」



あの最強とも言える、上目遣いに、毎回胸がドキンと高鳴っていることを、直くんはもしかしたら、知っているんじゃないだろうか。



「もう、指じゃなくて……」



そこまで言って、言いにくそうに一度は目を逸らして。


そしてまた見上げてくる、誘惑の眼差し。


熱っぽい息を吐きながら、紡がれる言葉は、まるで媚薬のように俺を煽る。



「…… 指じゃなくて俺……、透さんが欲しい。透さんの、が……」



「…… え、だけど……」と、怯む俺に直くんは、唇を寄せてくる。


軽くリップ音を立てて、離れた唇が、「…… ん、お願い。」と動く。


その瞬間、俺の奥深くに渦巻く劣情が、一気に身体を駆け巡り、理性なんか焼き尽くしてしまう。


荒々しく、細い腰を引き寄せて、横向きの体勢のままに、欲の塊を押し付けて、捻じ込んでいく。


少しだけしか濡らしていない其処は、硬く閉ざして俺を拒んでいるのに。



「―― ッあ、…… ん……」



苦しそうに息を吐き、時折、辛そうな声を漏らしているのに。


ごめん直くん、俺はもう、止められそうにもない。


だけど先端が挿ったところで、一旦息を吐き、背中から抱き締めて「直…… 大丈夫?」と耳元に囁いた。



「うん…ちょっとだけ苦しいけど、でも透さんが直接、俺の中に挿ってきてるのを感じることができるから、平気」



「……っ、」



そんなことを言って、もうどうなっても…。


とっくに理性は飛んでしまっているんだから。頭で考えるよりも先に、身体が動いて、一気に奥まで貫いてしまう。



「ーー あああっ、」



直くんの苦しそうな嬌声も、もう俺を煽る材料にしかならなくて。


美しく引き締まった足首を掴んで広げ、体勢を変えて、激しく何度も最奥へと突き入れる。



「ーーー あっ、ーー ああああ、っ、」



角度を変えて、一点をめがけて突くと、直くんが一際高い嬌声を上げる。


「もっと……」と呟く唇を塞いで、熱い吐息と共に、続きは訊かなくても分かる言葉も飲み込んでいく。


ーー君が何処に触れて欲しいのか分かっているし、


俺にどうして欲しいのかも分かっている。


俺は、君の全てを知っているつもりになっている。


一緒に高みに昇り詰めて、お互いの熱を感じ合うことで、愛し合ってると感じることも出来る。


ずっとこのまま、この幸せが続いていけば、どんなにいいだろう。


…… だけど……。





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   3/4

【clap】
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