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「いえ、なんでもないです。あ! これから伊鶴くんが出るんですよ。一緒に応援……って、新さん違う組だから、同じ組の人を応援しなくちゃダメですよね」
「ん? まあ、そうだな。一応敵同士だし、な。……と言っても、一人関係なく応援する気満々のやつはいるが」
「え?」
「あれ」
ため息をついた新さんが指を指しているのは……えっと、吉乃さん? 見上げた僕の頭をぽんぽんと撫でた後、「そ」と新さんが頷く。
「吉乃、守屋のこと応援する気満々だからなァ。気持ちはわかるし、同じ状況だったら俺も応援するけど」
お前のこと、な。と上から微笑まれて、ぶわぁって顔が熱くなった。
新さんが応援してくれるなら、僕も頑張らなくちゃ……! あっ、でもやっぱり、変なコスプレは当たりませんように!
そう心の底から祈りながらも、「僕も、新さんのこと……こっそり応援しますね」って言った。堂々と応援する勇気はさすがにないから……。
「くくっ、こっそり、な? 期待してる」
「はい! こっそり応援しますね!」
クラスメイトが周りにいる中、結構な大きな声で言ってるから、こっそりもなにもないって思いつかなかったから、にっこりと笑って返事をした。
「新! 結紀! あなたたちはいったいなにをしているんです? 僕の記憶が正しければ、あなたたちはどちらも僕と同じクラスで、海くんたちとは違うクラスのはずなんですが。それともあなたたちは僕が知らない間にクラス替えでもしたのですか」
返事をしてすぐに、冷ややかな潤さんの声が聞こえた。
そのずっと後ろに圭くんがいて、げんなりしていた。思わず、自分の腕をぎゅってしたのは僕だけじゃないはず。クラスメイトを見ると何人も青ざめて、「さむ……」と震えていた。
「ちっ、うるせぇのが来やがった」
「……ほう。うるさい、ですか。そもそもあなたたちが自分勝手な行動をしなければ、そのうるさいのが来ることもなかったと思うんですが? そんなことすらわからない鳥頭なんですか」
「あ?」
「あ? じゃないですよ。それぞれちょっかい出したい相手がいるのは結構ですが、時と場合を考えてもらえますか。毎回うっとう……いえ、煩わしいですよ」
オブラートに包んだつもりなのか、なんなのか。潤さんはにこっと笑いながらそう眼鏡を光らせた。
新さんがため息をつきながら、「言いかえた意味ねえよ」と言ってたんだけど僕もそう思う。
「とにかく、戻りますよ」
「は? 勝手に決めんじゃねえよ」
「勝手もなにもありません。あなたたちに拒否権なんて存在しませんし、生徒会で皆を引っ張っていく立場のあなたたちが自分勝手に行動なんて、他の生徒に示しがつきませんからね。……まあ、心の中だけは大目にみてあげますよ」
僕もあの中では守屋くん応援派ですしね、内緒ですよ。と目じりを下げる潤さん。
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