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足早にその場を去ろうとする進藤くんに、明らかに進藤くんは不快そうな顔なのに、それに気づかずにっこりと満面の笑みを浮かべる空。
空ってば、相変わらずだなぁ。僕ならあんなに怖い顔してる進藤くんには絶対近づけないよ。
へんなことに感心しながらも、二人の様子を他の周りの生徒の人たちと同じように息をのんで見つめる。
よく見ると他の生徒の人たちも進藤くんと同じく不快そうに眉間にしわを寄せていた。
踵を返した進藤くんのあとを追いかけるように、「待てよ!」と空が声を上げた時、食堂があるほうから数人が向かってくるのが視界に入る。
あれは……!
談笑しながら歩いてくるのは、他でもない新さんたち生徒会の人たちだった。
「あっ! お前ら、もしかして俺に会いに来たのか!?」
新さんたちにすぐ気づいた空は、満面の笑みを浮かべて新さんたちを見る。
僕はその光景を見て、胸の奥がぎゅっと苦しくなった。
新さん……なんていうのかなぁ。新さんたちの今までの言動とか行動を見ていれば、彼らがどんな発言をするかはわかってるけど、それでも無性に不安になる心は止められない。
……なぁんて、新さんがどうするっていうのがわかってるっていうか、ただそう思いたいだけなんだけどね。
そんな勝手に不安になってる僕なんて知らないはずなのに、空はそんな僕に追い打ちをかけるように楽しそうに声を上げた。
「なあ、もう少しで夏休みだろ! お前らは当然俺と遊ぶよなっ」
……えっ?
相変わらずにこにこと笑いながら、自信満々に空が言った言葉に、僕は呆然とする。
そして言葉を理解すると同時に、息が苦しくなった。
空と、新さんたちが夏休みに遊ぶ……?
それが決まったわけじゃないのに、その言葉を反芻していると、変なふうに胸が鼓動を打つ。
でも、そんな不安は、忌々しそうな顔をした新さんのおかげですぐに払しょくされるんだけど。
「あ? なにふざけたこと言ってやがんだ、てめえ。俺らがてめえみたいなのと遊ぶわけねえだろ。放課後といい、勘違いもいい加減にしやがれ」
「ねー。っていうかぁ、君と遊ぶくらいならいっくんと遊んだほうがまだましー」
新さんに同意するように頷きながらそう発言する圭くん。それに対して結紀がおかしそうな声を出した。
「……くくっ、それ、あのイカレクソ野郎が聞いてたらまじで遊ぶことになるぞ。鬼ごっこか?」
「ちょっ、ちょっとした冗談じゃんかぁ。鬼ごっこなんてしないってば! 結紀ちゃんのばかぁー」
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