想いと対峙
「――以上だ。なにか質問はあるか? ……ないなら今日はこれで解散だ。明日もまた放課後同じ時間に集まってくれ」
初めての話し合いは、一時間程度で終わった。
それぞれの役割の確認と、周りの仕事の確認をするだけだったから、そんなに長くはかからなかったんだ。
僕たち図書委員会はあまり仕事がないから、当日の校内見回りをすることになった。もちろん一人では危険だから、二人一組で、生徒会の人や風紀の人と組んだりして。
僕は誰と組むんだろう……? そう思ってたんだけど、なぜか僕だけ新さんと組むことは決定してしまった。
本当なら直前で決めるらしいんだけど、「海は俺と一緒に回るに決まってんだろ」と自信満々に言ったのを誰も止めることはできなかった。
僕は新さんと一緒ですごく嬉しいんだけどね。
会議も終わって、周りの人と同じように席を立つ僕。そんな僕を、新さんが、「海」と呼んで引きとめた。
「? なんですか? 新さん」
「ん? いや、寮まで一緒に帰ろうかと思ってな」
いいか? と聞かれ、僕は勢いよく、「はい!」と答えた。寮まで新さんと一緒かぁ……嬉しいな。
にっこりと笑うと、新さんも笑い返してくれる。そんな僕らを見て、圭くんがまたなにかを発した。
「ちょっ、なにそのいちゃラブ! 超萌えるーっ、ってか二人とも今から校内デートっていうやつー?」
「……?」
「あ? 黙ってろ。ほら、行くぞ海」
「あ、は、はい」
圭くんの発言の意味がわからなくて、というか早口すぎて聞き取れなくて聞き返そうとした僕だけど、新さんに手を引かれ、そのまま会議室を後にする。
後ろから圭くんの、「あー、答えてよぉ! なまごろしだー」という声と、「見苦しい、腐れチャラ男」という結紀の声が聞こえてきたけど、ずんずんと手を引きながら歩く新さんに気を取られていて、僕はそれどころじゃなかった。
廊下の中ごろまで来た頃、ようやく止まった新さん。ふう、と一息つく僕に、苦笑すると手を離して僕の頭をさらりと撫でた。
「あー、わりぃ、速かったか?」
「え? い、いえ。大丈夫です」
「そうか。じゃあ、帰るか」
どうやら僕が疲れたんじゃないかって心配してくれたらしい。
そりゃあ新さんと僕じゃあ足の長さが違うから、新さんのスピードに合わせると疲れちゃうけど、今は新さん、そんなに速く歩いてなかったから疲れなかった。
そう正直に伝えると、ふっとやさしくほほ笑む新さん。その笑顔にほっこりしてると、また手を引かれた。
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