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席に座って小さくなっていた僕は、他の委員長の人たちが、小さな声で、「……弱い者いじめみたいですよ、風紀委員長」と藤村先輩に視線を送っていたのには気づかなかった。その声に反応して、縮こまってる僕を見た藤村先輩のことも。
そんなことには一切気づかず、しょんぼりしていた僕に、隣に座っていた人から声がかけられた。
「ぁ、あ、の……だ、大丈夫?」
「え? ぁ、は、はい……えっと……?」
下から窺うように僕のことを見上げ、眉を下げながら心配しているような声をかけてくれたのは、なんというか……すごく小さな人だった。
どこの委員長かはわかんないけど、多分同い年か、年上だと思う。
だって、委員長になるのって、同学年か年上だから。でも失礼だけどどうみても……正直小学生か中学生にしか見えない。
イスにちょこんと座った彼は、視線を泳がして恥ずかしそうにしながらも小さく笑った。
「あ、あの、僕……桜川日向って言います。三年で美化委員長、です。……よ、よろしく、ね?」
「……え? あ、ぼ、僕は図書委員長の秋月海、です。……よろしく、お願いします」
先輩っていうのはびっくりしたけど、あいさつしたら、へにゃっと笑った先輩にはすごくいやされる。
なんだかマイナスイオンが発生してる気がした。
ほにょほにょと二人して笑っているのを、周りがほほえましそうに見ていたことなんて当然気づかなかった僕は、いきなり新さんに頭を撫でられたことで意識が戻された。
「海、そろそろ会議始めるからな」
「あっ、ご、ごめんなさい……!」
「くくっ、今じゃなけりゃあ、ずっと見ていたいくらいなんだけどなァ」
「……?」
またやっちゃった……! と思った僕だけど、新さんはなぜかにこにこと笑うだけ。
その顔を見て不思議に思うんだけど、その笑顔を見ていたら怒ってるんじゃないっていうのはすぐにわかるから安心した。
「ヒナ、お前もだ」
「ぅぁっ、ご、ごめんね、キイくん」
「ふっ……」
「わ、わぁ……っ」
隣では桜川先輩が藤村先輩に頭を撫でられておたおたしている。……なんだかそういうのを見てると、すごく癒されるなぁ。
ふふっ、と笑う僕を見た新さんは、やさしくほほ笑みながら僕の頭を一撫ですると、自分の席に座った。
「じゃあ、会議を始める」
「わかってると思うが、体育祭のそれぞれの役割についてだ」
藤村先輩と、新さんのその言葉で、会議はようやく始まった。
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