「……あー、なんかそれが言ってた意味わかるな。癒し系だわ、これ」

「ちょ、ちょっとー、それってなんなのさ、結紀ちゃんひどぉい!」

「うぜ。黙れカス」

 それ……と視線を送られた圭くんが、ぷくりと頬を膨らませたのを見て、結紀は盛大に眉を寄せた。

 それを見た圭くんはしょんぼりしながら、「うぅ、ごみを見るような目で見なくてもいいじゃん。ぐすっ」と泣き真似してて、それでさらに結紀は、「……きも」と言っていた。

「……ふふ」

 二人とも、相変わらずだなぁ。

 そう思いながら無意識に笑うと、それまでしょんぼりしていたはずの圭くんがなぜかいきなり目を輝かせた。

「か、かんわいい〜っ! なにその笑顔っ、ちょっと今写真とるからキープしてー!」

「えっ、あ、あの……?」

「ほらほら、こっちに顔向けてよー」

 笑顔のまま僕のほうに、一体どこから取り出したのかわからないカメラを向ける圭くん。……なんでいきなり撮影会?

 しゃべりながらパシャパシャとシャッターを切る圭くんに、僕はどうしていいかわからなくて新さんの後ろに隠れた。

 だって、写真なんてほとんど取ったことないから、緊張して。

 そんな僕の頭を撫でると、新さんが圭くんに対して口を開いた。

「おい、圭介、てめえいい加減にしやがれ」

「っ! するするーっ、いい加減にするから、会長も海くんもそのままの状態キープして!」

「? け、圭くん?」

「やばいっ、やばすぎるよこの構図! なにこれ、俺のこと萌え死にさせるつもりなのかな」

 ど、どうしよう。椿と同じような状態でぶつぶつとなにかを話し始めた圭くんに、僕は困惑しながらも新さんを見上げた。

 新さんはぶつぶつとなにかを話している圭くんをいやそうな目で見ていて、「……うぜぇ」とぼそりと呟いていた。

 それに結紀も頷いてまた、「……きもすぎる」と言う。

「ふっふっふ〜、そんなこと言われても全然悲しくないもんねー。今の俺は無敵だよぉ」

「……滅びろ腐れチャラ男がっ」

「ぅわぁ! ちょ、ちょっと! 結紀ってばなにすんのさ、危ないじゃん!」

「うるせえ。てめえがうぜぇから悪いんだろうが。よけんじゃねえよ、潔く殴られろクズ」

 ひ、ひどすぎるんじゃないかな……結紀。

 風を切るような音をさせて、結紀が圭くんに向けて拳を振るう。
 それを圭くんは必死に避けていて、それを見て僕はやっぱり二人ともすごいなぁと思った。

 だって、僕なんかじゃ絶対あんな攻防戦はできないんだもん。正直結紀のパンチだって見ているのがやっと。

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