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どうしよう……、そう途方にくれそうになっていたところで、「おい、なにしてんだ?」という聞きなれた声とともに、僕は後ろに引かれた。
「ぁ、え?」
「大丈夫か、海。こいつらにいじめられたりしてねえか?」
「え? あ、はい」
僕の頭の上に顎を乗せて、後ろからお腹辺りに手を回すようにした新さんに困惑しながらも僕はしっかりと答える。
でも次の瞬間、今の自分の状態と周りの状況を思い出して一気に顔を赤くした。
だ、だって、ここ会議室だった!
よく考えればわかることだけど、そもそもここにいるのは僕と生徒会の人たちだけじゃなかったんだ。その考えにようやく至って、そろりと周りを見渡すと、やっぱり他の委員長さんたちも僕らのほうを見ていて。
僕はいたたまれなくなって、新さんの腕の中で俯く。は、恥ずかしい。
「あは、会長見せつけないでよー。海くん超かわいいから気持ちはわかるけどぉ」
「……あ? やんねえぞ」
「ぅっ……わ、わかってるってぇ……、そ、そんなに嫉妬むき出しにしないでよー」
恥ずかしさを押しこめて前を向くと、なぜか口元を押さえながら僕らのことを凝視してる圭くんの姿があった。
……なんだか、ほんとに椿が、「萌えーっ!」と叫んでる時と同じような顔のような気がする。
そんなことを考えてると、「見るな」という新さんの言葉とともに、大きな手のひらで目を覆われた。ど、どうしたの、新さん?
「俺以外に、意識向けんな。わかったな、海?」
「ぅえっ? え、は、はい……?」
「いい子だ」
なんだか周りから息をのむような声が聞こえたけど、僕の勘違い?
ユイってば、なんで、「……きもすぎる、おえっ。吐くわ」なんて言ってるの。
目の前が真っ暗なせいか音で判断するしかない僕は、頑張って状況を理解しようとするんだけど、やっぱり音じゃどうしようもない。
……新さん、そろそろ手離してくれないかなぁ。
「あ、新さん……あの、もう……」
「あ? ああ、悪い」
「いえ……」
僕が言いたいことがわかったのか、すぐに目の上からは手をはずしてくれた新さん。
明るくなった視界に、目をぱちくりと瞬かせる。
そんな僕に、ユイとヨシさんが話しかけて来た。
「あー、そういえば自己紹介がまだだったな。俺は猫田結紀。同い年だし、結紀って呼んでくれ。お前は、海だったよな?」
「う、うん。よろしく、ね、ゆ、結紀」
ユイとしてじゃなくて、結紀としてまた知り合いになれたことが嬉しくて、ほにゃりと笑えば、なぜかぴたりと停止した結紀。
そんな結紀に首を傾げた僕に、ふっと口端だけ上げた結紀が言った。
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