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罰と(R-18)




罪との続きです。


無言を貫き、部室に入った。
手には、目を隠すための黒い布を携えている。
「…ああ、待たせて済まないな」
柳は振り向かず椅子に座ったまま、柳生に言った。きっと、仁王だと思っているのだろう。
いくら似ていると言えど声を出せば分かってしまうから、柳生は唇を噛んだまま柳の背中に近づいていく。
「ん…?」
急に近くなった距離に、柳が振り向こうとする。
けれど、すかさずその目を柳生が塞いだ。
「な、何をっ…」
柔らかく黒い闇が視界を覆い、柳の手が柳生の服の裾を掴む。
「……」
後ろから抱くように手を回し、柳生は柳のジャージのファスナーを下ろしていく。
「やっ…!!」
ビクン、と大げさに柳が肩を震わせた。


柳の身体を、柳生の手がゆっくりと這う。
抗う事をやめた柳は、少し不安げに柳生の服を握った。
なにしろ、視覚を消されてしまったのだ。
「んぁ、やっ…」
仁王に何度も抱かれた身体は敏感になり、乳頭を摘まれて押し潰される快感に腰を弾ませる。
頬をほめかせて小さく喘ぐ柳のハーフパンツを下げると、少しずつ勃起し始めている性器が露わになった。
それを柳生の手が撫でる。
すると、はっと息を呑み、柳は身体を強張らせた。
鍵の掛かった部室に熱気がこもり、昇っていく。


「はぁっ、あ、ぁあん…」
「っ……」
硬直してぴんと伸びた白い脚を、角張った手が押し開いた。
柳生に扱かれて勃ちあがった陰茎に、柳自身の手が添えられる。
柳生は声が知られないよう、「早く」と急いで小さく囁いた。
すると、柳はこくんと頷いて自分の性器を握り込んで擦り始める。
それを見つめる柳生の口が、柳の名前の形に動いた。
それから彼は、自分の手を柳の下腹部に持ってゆく。
そして、射精口を指先で弄った。
「ん、ひぁあっ…ぁあっ、あっ…」
不安定な柳の嬌声が段々と高くなっていく。
絶え間なく上下し、浅い呼吸を繰り返す胸の先端を不意にきゅっと摘まれ、柳は眉をひそめた。
「…ひゃっ、いやっ…!」
性感帯の耳で柳生が吐く息に身を捩る。
その度に椅子はガタガタと揺れ、いつ倒れるとも知れない。
「ひあっ…、ぅうっ…」
唇を噛む柳の焦れったさを、緩慢な快楽が助長する。
それに比例するように身体は熱を増し、理性や分別をすっかり消してしまった。


「っあ、ん…も、やぁっ…ぃれ、…入れてっ…」
柳は、自分を今犯している男が柳生だと気付いているのだろうか。
それとも、仁王に向けてそう言ったのだろうか。
どちらにせよ、たった一言が、柳生の良心を疼かせた。
たまらずに、乾いた唇を舐め、柳生は耳元で囁く。
「…何が、欲しいのですか…?」
柳は後ろから自分を抱き込む腕に縋りつき、震える声で言った。
「わか、てる…くせにっ…」
分かってる癖に。
全てを見透かされたような気分になり、柳生は呟いた。
「ええ、そうですね…」


どちらも、ためらわなかった。

でも本来ならば交わることはないと思い知って、伸ばした柳生の手がほんの少し、空中で止まった。
「いい、そのままっ…とらな、いで…」
目隠しを取ろうとした柳生を制すように、柳はかぶりを振る。
「は、い…」
誰のために。
それを訊けずに、柳生はただ肯定した。
床にジャージが敷かれ、そこに柳の身体が倒れる。


「っん、ひ…あ、ンンッ」
手足の痙攣が止まらない。
解したはずなのにまだ狭い蕾を、柳生の陰茎が埋めてゆく。
「っ、大丈夫…ですか…?」
苦しそうに声を上げる柳に、柳生が心配そうな声で尋ねた。
発する声が言葉にならず、柳はこくこくと何度か頷いた。
内側から押し広げられる感覚に、痛覚が全身を突き抜けていく。
「や、あぁあっ…!」
否定か拒否か、柳が首を横に振る。
やがて、後孔に陰茎が根元まで挿入された。
願望が叶えられていく満足感に酔いきれないまま、柳生は律動を始める。
落ち着き始めていた柳の呼吸が、再び乱れ、揺れた。


「んぁあっ…は、んっ…ひぃあっ」
柳の手が空を掻く。
じっとりと不快なくらい汗をかいた肌が打ち当たり、それに追随して性欲を掻き立てる卑猥な音がその耳に満ちた。
「柳…くん…っ」
「あ、ああっ、や、ンァッ…」
もう自分で自分を制御できなくて、互いに呼応するように腰を振る。
頭は真っ白で、かと言って何か考えるわけでもなく、渇望するままひっきりなしに体を動かした。
柳本人も気付かないうちに痛みは快楽の中に消え失せていた。
「はぁ、あっ、んぁ……ひゃぅうっ…!」
「っく、…」
正気すら保てなくなるような気持ち良さに、びくびくと身体が震える。
前立腺を突かれる刺激に、蕾は陰茎をきゅうきゅうと締め付けた。


柳生が柳の性器を撫で上げ、握り込んだ。
先走りが指を伝い、ジャージに落ちて染みを作る。
「んやっ、だめぇっ…ひ、んっ、ぃ…いくっ…!!」柳生の手の中で陰茎を摩られて、柳の声が大きくなる。
「…私もです」
独り言のように答え、彼は律動を激しくした。
「っ、はぁ…やっ、らめぇっ…い、きたっ…!」
「いいですよ…もう、イきたいのでしょう」
「あっあっ…ひ、いやぁっ、ぁああっ…!」
最後に全身を貫いた衝撃に耐えられず、柳が射精する。
それと同時にきつく狭まった後孔の中で、ひとつ、溜まった熱が弾けた。




深呼吸をする度、生ぬるい空気が喉に満ちる。
柳生は横たわる柳の身なりを整え、まるで情事が夢だったかのように部室を綺麗にした。
「柳くん…」
ひどく穏やかな顔で寝息を立てる柳の乱れた髪を手で梳き、その肩を抱く。
ふと目に映った白い鎖骨のあたりに、薄い赤の痕が見えた。
もう二度と抱き締めることはない身体の温度と匂いを抱く。
目隠しはもう無い。
柳は目覚めた時、何を思うのだろうか。
夢だと思って忘れていくのだろうか。
思えば柳は一度も、仁王や柳生の名前を呼ばなかった。
「柳くん…」
「っ、ん…」
目を覚ましたのかと思い、柳生は少し身構えた。
けれども違ったようで、柳は無意識のうちに柳生のYシャツを握ったまま眠り続ける。
「ん…に、お…っ」
「柳くん、…」


換気のために開け放った窓を、冷えた夜風が吹き抜けた。


end


読んで下さってありがとうございました!



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