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罪と(R-18)




「ぃやっ、ああっ…ひんっ、にっ…に、お…」
「れんじ…」
柳の身体が乗った机は、柳が仁王に揺すぶられる度にガタガタと動く。
誰が来るとも知れない部室での情交に、熱は冷める気配を見せない。
そんな空間と廊下とを隔てる扉に、柳生は背をもたれていた。

「柳くん…」
聞いたことはないけれど、扉の中から漏れ出してきているのは確かに柳の喘ぐ声だった。
柳生の顔が、入り混じった感情をたたえて複雑になる。

彼は、柳を好いていた。

その柳が今、柳生の目と鼻の先であんなにも乱れているのだ。
柳生の手は、鍵の掛かっていないドアのノブに触れた。
罪悪感と浅薄な欲がせめぎ合う。

ドアは、容易く開いた。


数センチだけ扉を開くと、柳生の耳に入る音が更に鮮明になった。
中の二人はそれに気付かないままだ。

「ひあぁっ、はあっ…ンンッ…!」
「あー、こんなにしよって」
仁王はそう言って、柳の性器を摩る。
「あっ…は、んぅっ…」
「こうやってされるの気持ちええじゃろ?」
「んぁ、にお、の…はぁん、きもちいっ…」
恍惚とした面持ちの柳が仁王の首に手を回し、抱きつくように身体を密着させた。
二人の汗ばんだ白い肌が打ち当たる。
「蓮二、深いの好きじゃもんな?」
「ひぃあっ、や、奥、あた、って…」
「ん?もうイく?」
「イくっ、んあ、も、っと…んぁああっ…!」
深く繋がった部分からする音と、それに混じった喘ぎ声が柳生の聴覚を占める。
彼は柳の姿態から目をそらせずに、立ち尽くした。
柳生が柳に対して抱いていた印象が崩れていく。
けれど、彼の好意が褪せることはなく、むしろ掌中に収めたいとさえ思った。


自分がもし、仁王だったなら。
彼に、なれたなら。


そんな下卑た思考を、罪悪感が駆け巡った。


翌日、A組の教室に仁王が現れた。
「やぎゅー」
「な、何ですか仁王くん」
一瞬震えた声をごまかすために咳払いをし、柳生は目をそらす。
「参謀知らん?」
「や…柳くんですか?」
「教室にも図書室にもおらん」
「…生徒会ではないでしょうか」
もしかしたら昨日、仁王は気付いていたのかもしれない。
そんな不安が、柳生の心をよぎる。
「じゃ、俺帰るって言うて」
「…何故です?」
柳生は内心、ほっとしていた。
ようやく、声が落ち着きを取り戻す。
「これ」
そう言って仁王が出した紙は、早退届だった。
保健医が捺印したその紙には、熱が38度を越えたために早退させると書いてある。
「…仮病はいけませんよ」
「嘘じゃないぜよ」
確かにそう言われれば、声が少し嗄れている気もする。
柳生は、仁王の頼みを承諾した。
「分かりました」
「んじゃ、」
仁王は小さく手を挙げ、肩に鞄を掛け直して出て行く。
4時間目が始まる鐘が鳴った。


「ああ、柳生」
昼休みの教室にいた柳生に、柳が声をかけた。
途端に、脳裏に焼き付いた肢体と声が、柳生の中で鮮明に思い出される。
「柳くん…?」
「仁王を知らないか?」
「いえ、私は…」
「そうか。なら、いいんだ」
その寂しそうな顔に、柳生の胸が少し痛んだ。
けれど、仁王が早退したことを言う気にはなれなかった。


部室に、仁王と柳の情事の跡は何もない。
そんな部室の前で、柳生は佇んでいる。
既に部活は終わって皆が帰宅し、先程、真田もここを出て行った。
ただ一人、柳だけが中にいる。
いつもデータ整理と鍵締めのため、そうやって残っているのだ。
けれども柳生には、それが部室から仁王と二人きりになる時間を待つための名目にしか思えない。彼は、ドアノブに手をかけた。


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