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「じゃあ柚麻、いってくるから」
「…いつ帰るの?」
「夕飯までには、戻るよ」

別の日。お昼を食べてすぐに竜也は出掛けていった。
友達のところと言っていたけど、本当だろうか。そんなの信じる気力もない。
この裏切り者と、彼に直接言ったらどうなるんだろう。じゃあ別れましょうとでもいうんだろうか。
気付くと手首の傷が一本ふえていた。






竜也は約束通り夕飯前には帰ってきた。おかえりなさい、ご飯はもうできたよと言って近付くと、なんだか不自然に避けられたら気がした。

「?…お風呂はいるの?」
「ああ…つかれたからさ」
「あ、でもまだお湯入れてないんだ」
「え…あ、マジで」

風呂場の戸を開けて、本当だと呟いてから俺を振り返った。

「俺柚麻に入れといてって言わなかったっけ」
「いわない」
「…じゃあまあシャワーでいいや」

たぶんだけど、ほんの少し、竜也は機嫌が悪いように見えた。イライラしている?
俺は竜也が服を脱ぐ前に、正面から抱きついた。

「わ、!」
「ご飯できたんだってば!冷めないうちに一緒にたべちゃおーよ」
「わるい、ちょっと待ってて」
「でも」
「柚麻」

ああ、イライラしてる。俺に近づいてほしくないから。近づいたらバレてほしくないものがバレてしまうかもしれないから。
俺は顔を上げた。
見逃して上げようなんて優しい考えはなかった。

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