03 2/4 「香水くさい」 「!」 竜也の顔から明らかに血の気が引いた。口をつぐんで切羽詰まった顔で俺を見ていた。 「…え、あ、柚麻?」 「昨日も同じにおいした」 香水の言い訳くらい、いっぱいできるだろうに。その反応で明らかにわかった、俺の予想は外れていない。 頭に血が上りはじめた。同時に悲しくもなってくる。 「竜也?これは?」 「あっ…」 襟を引っ張って例の鎖骨あたりを晒す。腹が立つ、竜也の態度にも。俺はもう、逃げられないように必死だった。 「柚麻、あの」 「…本当はどこいってたの?」 竜也は、あー、と言って目を閉じて、暫くしてまた開いた。俺の首あたりを見ていた。 「…ごめん」 「なにが?」 「…ごめん、」 「なにに対して?」 浮気だとかわかっていたことなのに、本人が認めた瞬間に二倍は悲しみが増した気がした。 寝た、女の人と、と竜也は少し早口で言う。それでから頭を下げて、ごめん、を繰り返した。 「本当にごめんっ…、もう絶対にしない」 「本当に?」 「うん」 「連絡とかも取らない?」 「取らない…ごめんな」 話なんか聞く前に、もっと泣き叫んでしまいたかった。なんで!どこのどいつと、いつから、どれくらい!! でも必死に許しを乞う姿を見ると、俺はただわかったよと頷くことしか出来なかった。 「次はないから……俺、信じてるからね?」 「うん、…ありがとう…本当にごめん」 抱き締められて、俺って単純だなあと思いながら少し泣いた。 果たして俺はこの時本当に竜也を信じていたんだろうか?いや、きっと信じていなかった。 *前 次# ← |