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「香水くさい」
「!」

竜也の顔から明らかに血の気が引いた。口をつぐんで切羽詰まった顔で俺を見ていた。

「…え、あ、柚麻?」
「昨日も同じにおいした」

香水の言い訳くらい、いっぱいできるだろうに。その反応で明らかにわかった、俺の予想は外れていない。
頭に血が上りはじめた。同時に悲しくもなってくる。

「竜也?これは?」
「あっ…」

襟を引っ張って例の鎖骨あたりを晒す。腹が立つ、竜也の態度にも。俺はもう、逃げられないように必死だった。

「柚麻、あの」
「…本当はどこいってたの?」

竜也は、あー、と言って目を閉じて、暫くしてまた開いた。俺の首あたりを見ていた。

「…ごめん」
「なにが?」
「…ごめん、」
「なにに対して?」

浮気だとかわかっていたことなのに、本人が認めた瞬間に二倍は悲しみが増した気がした。
寝た、女の人と、と竜也は少し早口で言う。それでから頭を下げて、ごめん、を繰り返した。

「本当にごめんっ…、もう絶対にしない」
「本当に?」
「うん」
「連絡とかも取らない?」
「取らない…ごめんな」

話なんか聞く前に、もっと泣き叫んでしまいたかった。なんで!どこのどいつと、いつから、どれくらい!!
でも必死に許しを乞う姿を見ると、俺はただわかったよと頷くことしか出来なかった。

「次はないから……俺、信じてるからね?」
「うん、…ありがとう…本当にごめん」

抱き締められて、俺って単純だなあと思いながら少し泣いた。
 果たして俺はこの時本当に竜也を信じていたんだろうか?いや、きっと信じていなかった。

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