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鈴木君の家から帰って、俺はペタリと床に座り込んだ。

…帰ってくると、思ってた。

俺が他の人の所に行けば賢斗は戻ってきてくれると、根拠もなく信じていた。

でも違うんだ。

どうやら賢斗は、本当に俺が何かに気づくまで帰ってこないらしい。

…ちょっと違うか。


もう気づいてはいる。
とっくに。

俺がいちいち面倒くさい事してるって、わかるけれど。


「……、」


それをやめられるかっていったら話は別。
無理。


「賢斗…」


無理やりひねり出したのでない涙がポロポロと零れて、一人ぼっちのリビングを濡らした。

なんで帰ってきてくれないの。

もう一生帰ってこない?

俺ずっと一人ぼっち?

違うよね、1ヶ月くらいずっと泣いてたら帰ってきてくれるかな。

その前に干からびてしまうかも。



会いたいなあ、
今すぐに。帰ってきて。

最初はこの状況さえ楽しんでいたというのに、今はうって変わって多分人生で一番悲しい。
寂しくて仕方ない。
会いたい。
会いに来て。


「ばか…賢斗」


震えた声はリビングに響いて割れるように消えていく。
パリン、パリンと音をたてて消えていく言葉。


俺が求めてた「拗ねる口実」を、今沢山、今までにないほど大きく手に入れたというのに。

今までさんざん楽しんできて、こういうのを望んでたのは、俺だったはずなのに。


違う、こんなの嫌だ。

賢斗が必ず戻ってくると信じていた。
すぐに戻ってきて抱きしめてくれるものだと思っていた、

でもそうじゃないと今更気付いた。


こんなの楽しくもなんともない。



可哀想な俺、


…楽しいものか。



 

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