06(1/4)
鈴木君の家から帰って、俺はペタリと床に座り込んだ。
…帰ってくると、思ってた。
俺が他の人の所に行けば賢斗は戻ってきてくれると、根拠もなく信じていた。
でも違うんだ。
どうやら賢斗は、本当に俺が何かに気づくまで帰ってこないらしい。
…ちょっと違うか。
もう気づいてはいる。
とっくに。
俺がいちいち面倒くさい事してるって、わかるけれど。
「……、」
それをやめられるかっていったら話は別。
無理。
「賢斗…」
無理やりひねり出したのでない涙がポロポロと零れて、一人ぼっちのリビングを濡らした。
なんで帰ってきてくれないの。
もう一生帰ってこない?
俺ずっと一人ぼっち?
違うよね、1ヶ月くらいずっと泣いてたら帰ってきてくれるかな。
その前に干からびてしまうかも。
会いたいなあ、
今すぐに。帰ってきて。
最初はこの状況さえ楽しんでいたというのに、今はうって変わって多分人生で一番悲しい。
寂しくて仕方ない。
会いたい。
会いに来て。
「ばか…賢斗」
震えた声はリビングに響いて割れるように消えていく。
パリン、パリンと音をたてて消えていく言葉。
俺が求めてた「拗ねる口実」を、今沢山、今までにないほど大きく手に入れたというのに。
今までさんざん楽しんできて、こういうのを望んでたのは、俺だったはずなのに。
違う、こんなの嫌だ。
賢斗が必ず戻ってくると信じていた。
すぐに戻ってきて抱きしめてくれるものだと思っていた、
でもそうじゃないと今更気付いた。
こんなの楽しくもなんともない。
可哀想な俺、
…楽しいものか。
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