06(2/4)

賢斗side




「にーちゃんご飯だと」

「おっけー」


あの家を出て数日、元々そんなに離れていない、母達のいる家に泊まっている。
家族は事情をしつこく追究こそしなかったものの、家賃ももったいないから早く帰れとしょっちゅう言ってくる。

まあ、そんな事はいい。



「…いただきます」

「はいよ」


味噌汁を流し込みながら悶々と頭を巡る、亮太の事。

数日たったけど、どうしてるだろう。
体を壊してないといい。


亮太の事だから反省も糞もないだろう。

帰ってきて、
と冗談でなく泣いてるかもしれない。


「…あの男」

「えっ?」

「あ、何でもない…」


…亮太、この前知らない男と居た。
まあ大学の友達だろう。

ペッタリと腕に引っ付いて、ナントカ君の部屋楽しみとか言ったのだって嫌でも聞こえた。

…正直、あの時は目の前が真っ黒になった。
どうしようもなく、悲しくなったけれど、気づかないわけがない。

ずっと、亮太がこっちをチラチラ見てくるのを。


「…ふは、」

「えっにーちゃん何笑ってんの」

「るっせえ」

「気味悪いわねー」

「……」


わかる、亮太の考えてる事なんて。

なんてわかりやすい。

だからこそ愛しいと思ってしまって、
…そろそろ帰ってもいいんじゃないかな…


って、
駄目だ。
これだから甘いんだ。

何の為に出てきたと思ってんだ。

それじゃ、何も変わってないじゃないか。


いつまでも、甘やかすと思うなよ。

頭に浮かんだ亮太の泣き顔を、掻き消すようにご飯を詰め込んだ。


 

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