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あの夜、夕飯を食べてから亮太の作ったクッキーを摘んでいる時だった。

携帯が鳴って、俺は少し席を外して電話に出た。

ちょっとごめん、と亮太に断って、廊下に出た。

電話の相手は、今日一緒に帰りかけた結構仲の良い友人。


「…もしもし?」

『よお、大丈夫だった?今日。』

「…うん、なんとか」


心配して電話をくれたらしい。

彼にはたまに、亮太の事を相談したりする。
勿論、被害妄想癖の事について。

最初はやめとけそんな奴と言われたけれど、最近は黙って話を聞いてくれる。良いやつ。


「ごめんな、急に帰れなくなっちゃって…あの本屋、道わかった?」

『気にすんなよ!そっちも大変だろ。本屋なんて気合いで探したぜ』

「そっか…良かった」


ありがとう、と言って電話を切った。

今回は彼も巻き込んでしまったな、と気分がズシリと重くなった。


リビングに戻ると、亮太がクッキーの前でシュンと俯いていた。

ハッとしたのと同時に、またかよと少し目眩がする。

またかよ。


「亮太…?」

「…迷惑、だった?」


消え入りそうな亮太の声。
震えてはいないから、泣いてはいないんだろう。


「賢斗は友達と帰ろうとしてたのに…俺、邪魔だったよね」

「そんな事言ってないよ、亮太」


亮太は、フルフルと頭を横に振った。

何なんだ。
迷惑だったなんて言ってないってのが、嘘だってのか。



つかれ、…



「…疲れた」

「…え?」


 

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