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賢斗side


大学のすぐ前の信号。

走って行ってしまった亮太の背中を呆然と見つめた。

亮太が何を考えているかはわかる。
また、自分が可哀想だとか思ってるんだろう。


そうならない為に声をかけたのに、なんだか無理やりな感じだったよな。

いや、実際無理やりだろう。知っている。

今までそんな事、何度もあったから。


今回はどんな理由を探したんだろう。
家に帰ったらまた俺が気づくように、ひっそりと泣いているんだろうか。


正直、気分が重くなった。俺は、たとえ亮太が楽しんでいたとしても、傷つかないようにいつも精一杯の努力をしているつもりなのに。

亮太はそれを必死に踏みにじって、自分が可哀想だと泣く。


つかれ、…


いやいや、そんな事思っちゃ駄目だろ。

帰って、悪いことをした覚えはないけれど謝って、抱きしめて、亮太を満足させればいいことだ。

…こんなんだからいけないのかな。
俺甘すぎ?
と言ったってどうしようもないのだけれど。


重たい足を引きずって、家に帰った。



「ただいまー…」


ほらやっぱり。
電気も付けない真っ暗な我が家。
本当は、明るい家で、明るく、亮太におかえりと言ってほしいのに。

俺の願いも虚しく今日もリビングからすすり泣く声が聞こえた。


 

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