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「亮太ー。ただいま」

「っふ…賢斗…?」

「そんなに泣いたら目が腫れるよ」

「…っ泣いてない」


いいえ泣いています。
亮太の心の叫びが聞こえるようだった。

そっか泣いてないのか、と言ってほっとけば良いのかもしれない。
けど、そんな事もできない俺は本当に駄目な奴だよな。
優しすぎると昔友達に言われたのを思い出した。

そうなのか、…


「亮太ー…俺なんかした?」

「んっ…してないよ、
悪いのは俺だよっ…」


別に、悪いも糞もないだろうに。
自分が悪いんだと言ってはいるものの、俺に「悪かった」と言ってほしいと思ってるのは手に取るようにわかる。

なんてわかりやすい。
わざとかな。


「…あのね、俺が好きなのは亮太だけだよ」

「う、そ…っ」


嘘なものか。
今日の亮太は俺が浮気をしたと思っているらしい。
勿論、心の底からそう思っているかは謎なところだけれど。

嗚咽をあげなからゴシゴシと目を擦る亮太の腕をそっと取った。

赤くなった目が俺を捉える。
こんなときでも、可愛いな、と思ってしまう。
だから甘いんだな。


「あの人はただの友達。方向が一緒だっただけだよ」

「……」


信じられないよ、という顔をして亮太は俯いた。

まだ続くのかと心の中で思わず溜め息。



本当にただの友達だよ。

こんなに悩ませてごめんね、1人でこんなに泣いていたんだね、

可哀想に。

可哀想な亮太、大好きだよ。



そう言えば、亮太は喜んで微笑むのだ。


 

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