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「……よし」


登校日のとある朝に俺は自分の教室の扉を目の前に、深呼吸をひとつ。
…まあな、こう緊張したところでどうもならないって事はわかってはいるけど、それでもやっぱり昨日の事が気になってしまう。

愁にちょっと強く言ってしまったし、あいつがその事をまだ気にしてるかどうかとかは俺にはわからない。
…どうやって話せば、どんな顔をすればいいのか。
果たしてそんなことを考えてなにか変わるのか。

…もうどうにでもなれ…

決めた、あけよう、と頭で決断を出す前に教室の扉を勢いよくあけた。
…勢いよすぎたかもしれない。


「…………あ」


愁だ、いた。
すぐに見つかった。
何をしているんだか知らないが、ボンヤリと突っ立って窓から頭を出している奴は、けして一人ではなくなんとなく見覚えのあるほかの生徒と二人で会話中だった。
…誰だあいつ。
どうせ愁がまた雲の話とかして、それになんとなくのノリで付き合っているんだろう。

普段なら、なんだあいつ消えろよとか思うかもしれないが、愁と二人にならずにすんだ事に少なからず感謝するをえなかった。

…俺に気づかないように。
いやでも、振り向いたら「いたの!?」っていう事態にもしたくないから、そっと、
控えめな、
でも俺が入ってきたとわかる程度の足音を鳴らして、奴らのいる窓から少し離れた自分の席に座った。

…これであっちはあっちで会話を続けてくれればいい。扉の音も大して気にならなかったようだし。


「あ、直樹だー」

「!」


……作戦失敗。
ひょいと窓から頭を戻し、こっちを見て笑う愁の隣で、見覚えのあるその生徒は表情を強張らせた。


「おはよー。」

「…あ、…ああ」


なんだよビックリする、突然声をかけてくるな。
愁のその笑った様子は、まるで昨日の事を丸々さっぱり忘れてしまったかのようだ。
…忘れたのか、それとも忘れたいのか。
はたまた気にすることのないほどどうだっていい事だったのか。


 

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