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馬鹿なのか。
何がって、俺が。
俺は、はたして馬鹿なのか、そう疑わずには居られないほど愁の態度はいつもとなんら変わらなかった。
俺が気にしすぎの馬鹿野郎なのか、それとも昨日のは夢だったか。
…いや


「あのねー」

「ん…?」

「朝、ダンゴムシが、」

「…ん…そうか」


今だってほらこんないつも通りの笑顔でダンゴムシの話なんかしてる。
…でも、それでもどうしても骨折した右腕と、ガーゼの貼られた右頬は目に入るわけで。
夢じゃない。
こいつは確かに傷ついてると、認めざるを得ない。


「…愁、今日、一緒に帰るか」

「うん。ダンゴムシ、見せてあげる」

「まだいればいいけどな」


やっぱり、俺は馬鹿だった。
この時、愁があまりに昨日の事を気にしていないようにしているから、
それに甘えて俺も、気にしなくていいんだなんて、思っていた事自体間違っている。
消えない傷を見えないふりするなんて最低だと、頭の片隅ではわかっていたのに。






────

「直樹…」

「ん?」

「まって…、靴ひもが…」

「……またかよ」


2人だけの下校時間。
下手くそな愁が結ぶ靴ひもは何度も何度もほどけて、そのたびしゃがんで下手くそに結ぶ。
その様子が可愛らしいから、俺はわざと手伝ってやらない。


 

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