どちらも同じ 3/3
しゃがんで遥を膝に抱いた。
「俺のこと、きっといつか嫌いになる」
「なんでわかるの?」
「俺は嫌なことばっかりしてるだろ」
「してない」
してるよ。
しょっちゅう行き過ぎた束縛で怒鳴ったりして、今日のように手をあげることだって、‥二度としないとはいいきれないんだ。
口先だけの約束さえできそうにない。大切にしてやれる自信がない。
「陸弥?怒っていいよ。殴ってもいいよ。好きでいてくれてるならそうしてよ」
違う。
お前は知らないのかもしれないけどそんなの本当は愛情表現なんかじゃないんだ。
好きでいてくれてるなら…なんて。
好きならそんなこと、本当はしてはいけないこと。
遥の頬にそっと手を添えた。
「…アザにならないといいけど」
「なっていいよ」
なぜ、そんなことを思う?
俺は酷い奴だってお前、よくわかってるだろ。
好きでいてくれてることは何より嬉しい。
でもなぜそんなことを言えるのか、俺にはわからない。
遥に甘えてしまう。だからまた、同じことを繰り返してしまう。
「陸弥ボーッとしてる」
「いや、」
「陸弥は俺のこと好き?だよね?」
「好きだよ」
「俺も同じだよ。」
同じ?
こんなに歪んでいるというのに。
「陸弥がすき」
遥は膝を立てて尻を少し浮かせると、俺の首筋に噛みついた。
ピリ、と、小さく鋭い痛みが走る。
血は出るだろうか?
遥の噛んだあとが、傷になって残ればいいと思った。
…なんだ、同じじゃないか。
俺もお前も。
END
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