下(1/3)
‥あのあと夕飯の前にお風呂に入り(別々で)
愁の意向で21時半の現在にはもう布団に入っているのである。
「愁…」
「おしり」
「痛いのか」
「ちょっと‥」
無理やりやったわけではないから血も出なかったけど、やっぱり初めて事に及ぶというのはなかなか大変だ。
しかし愁の態度は至ってふつう。
もし、もうやだ一生やりたくないなんて言われたらどうしようかと思っていたからそのぶんの心は救われた。
「直樹は痛かった?」
「…俺?」
「うん」
…俺のどこが痛くなるというのか。
どう言うのが一番なのか。
「痛……くない」
「へえ」
「…愁も慣れれば痛くなくなるから」
「慣れる………」
慣れる………。
ポツンと呟いたあとには何の声も聞こえなくなって、あれ、マズい事言ってしまっただろうかと不安になったころに小さな寝息が聞こえはじめた。
…寝た……。
愁のベッドの隣に敷いてもらった布団から、ちょっとだけ見える寝顔を伺う。
…明日には帰らなければならない。
明日からまた暫く、2人で顔を合わすこともできない。
自由奔放な愁が本当は泣き虫なんだと知ったのは最近で、
俺が守ってやらなきゃいけないのに、守ってやりたいのに
不安になった。
もし俺の知らないところでこいつが泣くようなことがあったら。
…もし俺の知らないところで
こいつが幸せそうに笑っていたら、?
その時俺はなんて言うだろう
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