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勝ち目のない賭けに出て負けた。それだけだ。

悪酔いしたように痛む頭と風呂場から聞こえる水音に、どうしようもなくいたたまれなくなりベッドから抜け出した。フられる以前の問題だったかと小さく自嘲。

言うつもりなどなかったはずなのにという後悔と、虚しさで埋め尽くされるような錯覚に手足が熱を失っていく。どうなるのだろうか。今までの関係など維持できないだろう。船を降りると言い出すかもしれない。他の理由なら上手く丸め込んで船に留まらせることが出来たとしても、これが理由ではもう惨めになる一方だと容易に想像がついた。

縋りつく女を手酷くフっていた姿を思い出す。俺は遊びがいいの。しつこいのは嫌い。聞きなれた常套句だ。エルは島に降りるたびに女がらみの問題を起こしてきた。本当に、どこがいいのかすらわからなくなる程節操のない男だと思う。それでもどうしようもなく惚れてしまった自分悪いのだと冷たい床に蹲る。

エルが出てきたらシャワーを浴びて、船へ帰ろう。それとも、シャワーも浴びずにこのまま逃げてしまおうか。出てきたエルの反応が怖い。こんなに手が震えるのは久しぶりだ。せめて、シャワーを浴びる前にはっきりと告げてくれたらいいのにと恨みがましく思ってしまう。はっきり告げられるまで、女々しい気持ちは、万が一を期待してしまいそうになる。変に期待して、出てきたエルの顔を見た時にまた心臓が軋んで叫ぶことは分かりきっているというのに。

「ばかだろ、おれ」

こうやって震えながら待っているのは、結局のところその万が一に期待しているからだと頭の中の誰かが笑った。








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