喉の乾きに睡眠から目覚め、食堂へ向かうと存外その片隅が薄明かりに照らされていた。

からん、と氷の溶けた音にこんな時間まで酒盛りかと気にせず足を踏み入れようとした時、聞きなれた声に思わず足が止まる。

「ーーー…しさぁ、好きな奴と結ばれたら、それはそれで、番じゃねぇかなーっとは思ってるよ」

薄明かりの中に浮かぶ影に、もう一度目を凝らせば浮かび上がる二つの輪郭。二人して気だるげに体制を崩しながら、ナマエと、兄弟分はなめるようにグラスを口元に運んでいた。からん、と再び氷がグラスを打つ音が響く。

「そうだなァ、体だけの番なんて寂しいもんより、そっちのがよっぽど健全じゃねぇか」

「はは、そういいながらΩに取られたら目も当てられねぇよな」

「…考えすぎ、と言えないのが辛いとこかね」

「ま、今更告るつもりもねぇんだ。何考えても妄想止まりだよな」

「なんにしても、ツレの死んじまった俺に言わせりゃ勿体ねぇ話だけどな」

意気地が無ぇんだよ、とナマエの小さな苦笑が響く。

小さな波の音すら響く静かな夜も片隅で、足の歪んだ椅子がかたりと体重を支えていることを主張した。グラス弄びながら、頬杖をついたナマエが少しばかり沈んだ声音で愚痴を続けた。

「下手に嫌われるよか、今のままの方がいいよ、俺は」

その表情は薄明かりでは見えなかったけれど、気がつけば自身の足は踵を返していた。