疑ったことも無かった。

確かに何日か部屋に篭もりっぱなす時もざらにあったけれど、それは本に没頭していたからだったり昼夜逆転だったり、まぁ、そういったことだろうと思っていた。

しかしこれはどういう状況か。

俺の肩を床に縫い付けるローの手が嫌に力強く、馬乗りになって俺を見下ろすローの顔は切羽詰って余裕が無い。

荒い息遣いに紛れて、艶かしい赤い舌が物欲しそうにちらりと揺れた。

「あ、あの、キャプテン…?」

問い掛けにも答えないローの目は熱っぽく濡れて、下腹部が誘うように腹の上で緩く円を描く。どう見ても、そこに理性がある様には見え無かった。

「え、え、え、マジで?ちょ、本気で?キャプテン?」

ぎょっと身を引こうにも後ろは床。荒い息のキャプテンに引きずられるように、俺の腹の奥まで熱を孕み始めるのが生々しい。

「キャプテン、まさか、Ω…?」

伺うように見上げれば、その顔はぺろりと舌なめずりしながら上擦るように息を吐いて俺の腹をまさぐる。

「は…、幻滅するか…?」

言葉と表情と行動が一致してない。だが本当にΩならば話はそれどころではない。マズイ、といよいよ本気でその肩を押し返すとローの顔が不満を露わに俺を睨み下ろす。

「キャプテン…!俺αだから!本当にやばいって!!」

誘発され始めた自身の熱を必死になだめ透かしながら叫ぶように言えば、ローは少し意外そうにその目を丸くした。大方発情が我慢出来なくて、俺がβだと思っての強行だったのだろうことは察しがつく。俺ってばαのくせになんか平凡だもんな!

「だからホント、待ってキャプテン…っ!」

そんな俺を制し、ぺろりと、再び舌なめずりした顔はまさに獲物を見定めた猛獣のそれだった。

「諦めろ、な?」

いつにないフランクさでぽんと俺の肩を叩いたローが、しかし逃げることを許さない圧力をいい顔で掛けてきて悲鳴が出た。







拝啓お父様。

いかがお過ごしですか。僕も海賊になりましたが、海賊はとても怖いです。また会える日まで生き延びていることを祈っていてください。合掌。