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チャリーン、と煙草を
買うための硬貨が自販機の
下へと転がっていく

「くそ〜、出てこいっ!!」


大きな体で太い腕を伸ばし
必死こいて自販機下を探る
男の姿はなんとも惨めで。


「ちょっと、見てあれ」

「うっわ〜、ホームレスかな?」




なんで俺はいっつもこうなんだろ

誰に言われたかなんて
もう忘れたけど

「鬱陶しい」

と言われてビンタされ
切り捨てられたこともある




「俺ってふがいねぇー」


意気地がない、情けない
そうそんな言葉がお似合いだ

そんな不甲斐ない俺は
気がつくと、お金もないのに
気晴らしにバッティングセンター
へと足を運んでいた





「っくう〜!百発百中〜!
まだまだ俺もいけるな…」

使い込まれた金属バットを
頬につけてスリスリしていると
いつの間にかネット外から
女性が一人、こちらを見ていた


やっべぇ、また変なとこ見られた…
どうせ気持ち悪いおっさんだ、とか
思われてんだろうな〜…とほほ


そう思いながら横目で
その女性をチラ見する



「……、すごい…」


その口から咄嗟に出たのは
ただ、それだけだった


その言葉に品田の心は揺さぶられる



「コツさえ掴めば、簡単だよ?」


ちょっとドヤ顔なんて
キメちゃったりして…
いや、ちょっとやりすぎたか…


恐る恐る様子を伺う


「あ、あのっ……!!」



女性は品田の元まで寄ると
目を輝かせてこう言った


「私にも、コツ教えてくださいっ」




俺のモテ期がきた

そう、品田は思った

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