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大きな傷跡の残るその顔は
すれ違う人達の目線を奪う

私が初めてこの人を見たときも
その傷跡に目を奪われてしまった



そして…なにより





「…怖いんですよね」

「何が言いたい
さっきからじろじろ見やがって
いい加減家に帰ったらどうだ」

「柏木さんの顔の傷のこと
いつになったら教えてくれるのかな、って」

「教えねぇよ」

「…ケチ」

「勝手に言ってろ」




場所は風間組事務所

私が此処へ訪れる時間には
いつも柏木さんと二人きりになる



そしてたわいもないこの
やりとりが、楽しくて堪らなかった






柏木さんは目を通していた
書類から目を離して
頭を掻きながら
面倒くさそうに私を睨む





「柏木さん、怖い」

「そうしたらお前がさっさと
帰るかと思ってな」

「私は帰りませんよ」

「…はぁ…何が面白いんだ
此処がそんなに居心地良いか?」

「違います、そうじゃなくって」







まぁ、あなたが好きだから
なんて言ったって
笑われることは分かってる

だからそれは言わないことにした






「…あ〜あ、もう、そんなに
帰って欲しいんなら
帰ってあげますよ〜…」

「それはありがたいことだな」




フッと鼻で笑う柏木さんを見て
私は、ムッとする




「こ…こんな時間まで彷徨いてたら
彼に怒られちゃいますからね」





なに意地張ってるんだ、自分は

そんなすぐに見透かされる
嘘なんかついても、どうせ
柏木さんにはお見通しなのに




ちらり、と横目で柏木さんを見るが
この人は構わず仕事を続けていた


「仕事熱心なことで…」


その姿にがっくりと肩を落とし
私は気怠そうにドアに向かう



「もう帰りますね
今日もありがとうございました」



ぷらぷらと適当に手を振って
背中を見せ、ドアを開けると





「…それで、誰なんだ」



後ろからぼそり、と声が聞こえた




「……へ?」




後ろを振り返ると
その手を止め、こちらを
じっと見つめている柏木さんが居た


私はきょとん、とし
沈黙して見つめ合っていると
柏木さんは溜息をついて
立ち上がり、目の前まで歩いてくる




「…どうしたんですか…?」

「どうしたんですか、じゃねえよ
それでその彼って言うのは
どこのどいつだって言ってるんだろう」

「…柏木さん、気になるんですか?」

「……どうなんだよ」





その表情はあまりにも真剣で
私は思わず口に手を当てて
ぷっと笑ってしまう





気にしてくれるんだ、なんて
そう思うと嬉しくて嬉しくて









「教えましょうか」

「…別にたいして興味はねぇが
お前が教えるって言うんなら
聞いてやっても…」

「ふふっ…」

「なに笑ってんだよ」




くすくす、と笑う私とは逆に
柏木さんは相変わらず
真剣な表情を崩さない

そんな柏木さんの顔が
なんとも可笑しくて







「彼氏なんていませんよーだ!」

「…!!て、てめぇ嘘ついたのか!」

「それじゃ、帰ります!」

「お、おい待てっ…!
なんで嘘なんかついたんだ」




勢いよく私は事務所の階段を
急いで駆け下りると
柏木さんを見上げた





「顔の傷のこと教えてくれたら
また教えてあげますよ」

「……ケチだな」

「勝手に言っててください」





柏木さんが傷の理由を
教えてくれた時

それが、私の柏木さんへの
告白の時になるのであった




さて、いつになることやら








___________________





※あとがき



リクエストの柏木さん夢でした!

柏木さんの夢に甘いシーンを
入れたかったんですが
なんだか柏木さんらしく
なくなってしまってやめました(笑)

とりあえず主を意識しているが
興味ないふりをしている
みたいな柏木さんになってます


いつか甘々なシーンにも
チャレンジしてみたいですね!



またリクエストお待ちしております!
ありがとうございました!



8/4 19:39




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