「・・・私、冴島さんが好きなんです」






それでも止められなかった
想いを告げられずにはいられなかった

どうせ、叶わないなら

いっそのこと、砕け散ってしまっても
いいものかと思えた




「お、お前・・・何言うて・・・」

「冴島さんが私のことを
なにも思ってないのなら・・・
私は、それでもいいです・・・!」



でも諦めきれずにいるなら
それもそれでいいと思えた



さっきまでの緊張が
嘘のように引いてしまう

冴島さんは黙り込んだまま
その場で顔を逸らしてしまった




「今日は楽しかったです
・・・なんか、すみませんでした」





返事を聞くまでもなく
私はベッドから降りると
バッグを持って出口へと向かう


大きな溜息が口からこぼれると
同時に、大粒の涙も溢れた






そして今日の為に履いてきた
ヒールの高いパンプスを
履こうとしたその時






がばっ




突然、後ろから勢いよく
大きな腕に抱き締め
引き寄せられる




「行かんといてくれ」

「さ、冴島さ・・・っ・・・!?」




引き止められた言葉と同時に
強引に首を振り向かせられると
熱い冴島さんの唇が
私の唇へと重なった


そのキスは長く
すぐに私は息を切らしてしまう





「んっ・・・はぁ・・・
さ、冴島さん・・・なん、で・・・っ」

「・・・ワシは、自分に嘘ついとったんや」

「嘘・・・?」



向かい合って見た冴島さんの目は
真剣な眼差しで、

両手を肩に乗せられると
冴島さんは言い聞かせるように
私を見つめた



「ムショに入ってたワシみたいなもんが
お前を好きになったらアカンと思っとった
それにヤクザで命もいつ落とすか分からん

ましてやお前とは何十歳も年が離れとる
・・・こんなワシが、お前を大切に
できるなんて思えへんかったんや」

「・・・それでも、私は」

「分かっとる」




なにを言われようが
好きなのには変わりはない

そう言おうと思ったが
言う必要もなかった




「・・・そんなことくらい、
隣に居ったお前見とったら
よう分かったわ」

「ばれてたんですか」

「俺の目は誤魔化されへんからな
・・・でも、分かっとった上で
お前を避けるようにしとった
自分に嘘ついてたんや」



この人は、なにもかも知っていた
何も分かってないのは
私だったのかもしれない






「・・・お前は、

こんなワシでもええんか?」




好きになって
ただ一人で突っ走って
いただけだと思ってた


冴島さんが私のこと
こんなにも見ていてくれたなんて
思いもしなくって






「なまえ・・・?」




涙が溢れているのを
必死に隠そうと俯く私を
冴島さんは心配そうに覗き込む

そんな瞳に吸い込まれそうになって
私は甘えるように胸に飛び込んだ




「・・・好き・・・
好き、です・・・冴島さん」

「・・・ありがとうな、なまえ」

「私は、冴島さんが・・・好きです」

「あぁ、ワシもや」



一言私が呟くたびに
冴島さんの包み込む腕が
優しく、そして強く抱いてくれる





「なまえ、好きや」




ぐいっと泣き崩れた顔を
両手で持ち上げられると
冴島さんは唇にまたキスをした



「私、一生冴島さんを
手離しませんから」

「ふっ、望むところや」




愛、なんていうものは
歳も極道も関係ない

極道を好きなってはいけない
極道が人を愛してはいけない

そんな決まりなんてないのだから







_______________



※あとがき


「なまえ」

「どうしたんですか?」

「遅いかもしれへんが・・・
その服、似合うとるで」

「!!

・・・見てくれてたんですね」

「あ・・・当たり前や」



実はシャイボーイ冴島。








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