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明日は年に一度のクリスマス

私はいままで一度も
楽しいと思えたことはなかった


だってそんなの彼氏が
いないと楽しくないじゃない
相手のいない私にとって
それはただ憂鬱でしかなかった



「なまえ」

「……なんですか」

「どうした、そんな顔して」

「…どんな顔してます?」

「……不機嫌そうな顔だな」


明らかにむすっとしたなまえに
一緒に飲んでいた桐生は
ちらりと顔を覗き見ると
可笑しそうに笑う

そんな桐生になまえは
さらにむすっとして
返事を返した



「私、クリスマス嫌いです」

「そうか」


憂鬱ななまえの言葉を
あっさりと受け取ると
桐生は静かに軽く頷く



「…だって相手いない人に
とったらただの平日ですもん」

「奇遇だな、俺も明日は平日だ」

「……」



桐生に彼女がいないのは
なまえも知っている

しかし彼女がいないとは言えど
この性格と顔立ち、身なりで
女性が放っておく訳がない

なまえはじっと
桐生を睨むように嫉妬する



「俺に彼女は居ないことは
お前も知ってるだろう」

「でも、どうせ誰かから
誘われてたんじゃないんですか?」

「…それは、また別の話だ」

「ほらやっぱり…
桐生さんモテますもんね……」

「あいつらにはそんな
特別な感情はねぇだろう」



桐生は煙草をふかして足を組む
そんな姿をなまえは
横目でちらりと見ると
はぁ、と一息ため息をついた




「分かってないですね…
キャバ嬢とはいえ桐生さん相手に
なるとそれは仕事じゃなくて
本気の恋になるんですよ」

「なぜお前にそれが分かるんだ」

「分かりますよー
それは………それ、は…」




あれ?



なまえの中でそれが
あたりまえのように
思っていたのか理由を
問われると顔が熱くなってくる

真横にいる桐生は煙草を
灰皿へ捨てると肘をついて
顔をなまえへ向け、
真っ直ぐな瞳で見つめた




「それは、なんだ」

「き…桐生さんみたいな人は
女性に好かれますからね」



私何言ってるんだろう?
顔の熱さは増していくばかり

根拠もないのに桐生さんを
知ったような口聞いて
なんだか、私…恥ずかしい奴?



「俺は好かれやすいのか?」

「そ、そうですよ」

「…そうか
それを気づいたことも
意識したこともなかったな」

「えぇ?!逆に気づかないのも
驚きですけどね〜…」

「なまえ」

「はい?」


熱くなった顔を
手でぱたぱたと扇いで
冷やすなまえに
桐生は声を掛ける



「…お前も俺を意識するのか?」

「……へ…!?」



あまりの唐突な質問に
なまえは手の動きを止める

時が止まったように
二人の間に沈黙が流れた


「それって……」



遠まわしに聞こえるけれど
直訳すると、それは……

桐生さんを好きか…ってこと?


なまえは桐生と目が合うと
すぐに目を逸らして顔を赤くする



どちらかというと
意識しすぎるくらいだった

でも手の届かない人だと知ると
簡単に諦められた



「正直…意識、してましたよ」

「…!」

「でも桐生さんが私のこと
意識してくれるわけない
って思ってたか…」

「なまえ」

「………?」



話を遮るように名前を呼ばれると
なまえは桐生を振り返る

そんな顔を見て桐生は
やれやれ、と首を振る




「お前も好かれてることに
気づいてないだけだ」

「………??」


それでも意味を分かっていない
なまえは首を傾げて悩み始める

その隙に食事代の会計を済ませた
桐生が席から立ち上がり
なまえに行くぞ、と声をかける



「えっ? 行くってどこへ…?」

「何も知らないお前に
クリスマスがもっと面白い
ってことを俺が教えてやる」

「えっ!本当ですか!」



ワクワクとご機嫌な
なまえはその後
桐生に連れられるホテルで
やっと言葉の意味を知るのだった




________________



※あとがき


ホテルにて


「なななな、なんでっ?!
なんで服脱ぐんですか!」

「もしかして、お前…
こういうの初めてなのか…」

「こ、こういうのって
どういうのですかっ!?
変な冗談はよしてくださいっ」

「……弄りがいがありそうだ」

「き、桐生さんっ目が怖い…!」


ホワイトクリスマス(笑)





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