生きることは悲しいことだと誰かが言っていた。人は生まれながらに罪を背負っているなんて考えもある。たしか、原罪、というのだっけ。だから宗教は大多数の人数の心の拠り所になっているし、悲しさに付け込んで詐欺を働く人だって出てくる。
六十億人が蠢くこの世界で、生きるという行いは、悲しいことなのだ。
では、何故人は生きるのか。悲しいくせに、何故人は生き続けるのか。何故自殺は悪なのか。何故生きることから逃げ出すことは弱いことだと後ろ指を差されるのか。
何千年も前から哲学者達が考え続けてきているにも関わらず、明確な答えは出せていないのだから、そんなこと、私が考えるだけ無駄だ。私のような凡人が、たったの二十数年しか生きていない若輩者が、正しい答えを出せるなんて、そんなわけがない。もし答えを出せる人がいるというのなら、その人はきっとキリストにだって釈迦にだってなれるだろう。
それでも、どうしても、その難題に、神にも仏にもなれない凡人が、無理矢理に答えを出さなければならないとしたら。
それは、生物の本能に従って子孫を残す為だ。私はそう思う。
人間が生きるのは、原始の時代から遺伝子に刷り込まれた本能が、生きるように命令をしているからだ。そこには、思想とか、哲学とか、理性とか、そういう後付けされたものは一切関係ない。生きなければいけないから、悲しかろうと苦しかろうと、人は生きるのだ。
私はそう思う。
だって、そう思えば、生きることの悲しさは、少しだけ誤魔化せる気がする。
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