図書館から出て、本を眺める。
こんな本を借りてしまったのは、どこぞの野郎が地味地味言って来るようになってしまったせいだと思う。
地味の改善方法、なんて、ほんとに改善できるかもわからないのに。
本を持って廊下を歩いていると、前に人、同時にあ!!という声も聞こえる。その人は確実に私に向かって指を指していた。
特徴的な髪型に、赤髪。
どこかで見た気もするが、関わった覚えはない。頭の中を探っても名前すらでてこなかった。
まあ、もし知り合いだったら後から謝ろう。
「どちら様ですか?知り合いですか?」
「いや?違うけど」
あ、もしや私に指を指していたわけじゃなかった感じか。
すみません、と頭を下げて横を通り過ぎた。
「お前って、最近侑士といるやつだろ!」
ん?聞き捨てならない言葉が。
「侑士って…どこぞの胡散臭い眼鏡?」
「そうそうそれそれ!」
「私そいつと一緒にいた覚えないんだけど」
「そーなの?侑士がめっちゃおもろいやつが隣なんや。ずっと一緒におるくらい仲良しやで!って自慢してくるからてっきりそうかと」
きっと忍足くんが言ったであろうセリフを声真似を添えて言ってくる。
ピキッと音がなった気がしたのは、眼鏡が割れたか、はたまた私の心の何かが壊れたか。
やっぱ忍足くんの頭は何本かネジとんでってるんだろうな。一緒にいた覚えないんだけど。
まあ、今言うべきことは。
「声真似似てないね」
「は!?どこがだよ!亮とかジローには大ウケだったんだぞ!」
「あ、そう」
「クソクソ、侑士の友達とかやっぱムカつくやつばっかりじゃねーか!」
「ごめん、友達じゃないから」
「侑士はマブダチって言ってたけどな」
うわぁ、何あの眼鏡。マブダチとか何か古くない?というか、私としてはただのお隣さんだって。
「そんな嫌な顔すんなよ。侑士変態だけどいい奴だぜ?」
「変態なんだ」
「おう!ちなみに俺は向日岳人!岳人様って呼んでいいぜ」
「向日くんね。私は苗字名前」
スルーすんなよ!と声が聞こえるが、無視しよう。
名前を聞いて思い出したが、こいつもテニス部のレギュラーじゃないか。そりゃあどこかで見たことがあるはずだ。
「苗字ってよ」
あ、何だかこの言葉にデジャヴを感じる。
「地味だよな!」
「頭殴ってもいい?」
「何でだよ!侑士が地味って言ってたからどんなかと思えばほんとに地味だな」
「忍足もろとも消してやろう」
テニス部は皆こんなやつなんだろうか。今すぐにでもこの本で頭殴りたい。
「地味直すとか無理だろーから、そんな本借りても無駄じゃね?」
「わかってたけど言うなよ!」
もうやだ。テニス部嫌い。本を破り裂かなかった自分を褒めたい。
こいつらに君をつけて呼んでたのがバカバカしくなった。
それにしても、青色と赤色ってやっぱテニス部はカラフルだな。次は黄色あたりかなって、人はこれをフラグと呼ぶのか。
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